発達障害児にどう対応 日教組教研集会 増加傾向 戸惑う現場 教師の専門性向上を

 クラスに2~3人はいるとされる発達障害の子どもをどう支援するか-。1月末に佐賀市で開かれた日本教職員組合の第62回教育研究全国集会(教研集会)でも、議論になった。特別支援学級も急増しており、現場の負担感が高まる中、教師の専門性の向上など課題が浮かび上がっている。

 「殴るつもりはなかったけれど、もし押し倒した時にけがをさせていたら、体罰ととられかねなかった」

 教研集会の分科会に参加した佐賀県内の中学教諭(59)は、7年前に「情緒障害学級」を担当していた当時の出来事を振り返った。

 いくら注意しても、教室の床や天井を激しくたたく男子生徒がいた。押さえ込もうと胸ぐらをつかみ、馬乗りになった時だ。「殴るなら殴れ。体罰してよかとか」。生徒の言葉に、すぐに手を離した。

 力に頼らない対話による指導を信条としてきたが、その時はどう対応すべきか判断に迷った。「付きっきりで見ていないといけない生徒が増えた。教師への負担も大きくなっている」。教員歴36年のベテランは学校現場の変化を実感する。

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 文部科学省が昨年実施した調査によると、公立小中学校の通常学級に、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある児童・生徒は6・5%在籍。特別支援学級の数がこの10年間で1・6倍に増えている一方、発達障害の可能性があっても学校で特に支援を受けていない児童・生徒は約4割に上っている。

 こうした実情もあり、教研集会の会場では「子どもの指導が難しくなっている」との声が多く聞かれた。大阪府の小学校教諭(51)も「昔は、一度でひっくり返せるお好み焼きと同じで、学級全体に一度説明すれば大抵通じた。今は、1個ずつひっくり返すたこ焼き。子どもの理解度の差が大きすぎて、個別の指導が必要な児童が多い」と話す。

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 「発達障害の可能性のある子のサポートに時間を割くあまり、ほかの子への対応がおろそかになってしまう」と漏らす教師も多い。特に小学校の場合、1人の担任で全員をまとめていく「学級王国」の仕組みが、その傾向に拍車を掛けている側面もある。

 発達障害があっても、適切な対応をすれば問題なく学校生活を送れる子も少なくない。九州大学人間環境学研究院教授の針塚進さん(臨床心理学)は「発達障害の子が増え、専門ではない教師が対応に苦慮している。障害児教育の研修を半年間くらい設けるなど、専門性を高める必要がある。教育委員会も特別支援教育を学んだ人材を配置するなど、採用計画を見直すべきだ」と提言している。

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 ■成果主義に焦らずに

 特別支援学級だけでなく、特別支援学校の数と在籍する児童・生徒も増えている。文部科学省によると、2012年度の在籍者数は12万9994人で、この10年で1・4倍に増加。学校数も66校増え、12年度には1059校となった。

 背景には、特別支援教育に対する保護者の理解が深まった▽発達障害の変化▽知的障害のある発達障害など症状が重いケースが目立ってきた-など、さまざまな要因があるとされている。

 特別支援学校を取り巻く環境にも変化が見られるという。教研集会に参加した長崎県の40代の教諭は「障害児教育でも成果主義の傾向が見られるようになってきた」と指摘する。保護者から「早くできるようにしてほしい」など要求が高まっていることから「それが焦りになり、子どもを愛せなくなる『心の体罰』につながらないようにしていかなければ」と話していた。

=2013/02/05付 西日本新聞朝刊=

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