【こんにちは!あかちゃん】第2部 少子化 オトコの理由<2>結婚に踏み切れなくて

多くのカップルが愛を誓いに訪れる福岡タワー(福岡市)の「恋人の聖地」。パートナーがいなければ新しい命は授かれない 拡大

多くのカップルが愛を誓いに訪れる福岡タワー(福岡市)の「恋人の聖地」。パートナーがいなければ新しい命は授かれない

 《6年間、彼女がいない。結婚も子どもも、もう諦めている。親の世話で負担をかけそうで、恋人をつくる気になれなくて…》

 福岡市の隆さん(28)は週の半分を父の家で、残りを母の家で過ごす。両親は息子の成人を機に熟年離婚した。がんを患って仕事を辞めた父には、月6万円を渡している。母はパート勤めで生活はギリギリ。これでもし母が倒れたら…。

 しかも昨年末、自身はIT会社を解雇された。不当だとは思ったが、どのみち会社勤めでは介護に通いづらかったし、今は起業するしかないと考えている。

 こんな境遇で恋愛など面倒くさくて考えられない。前の彼女は毎週末会わないと気が済まない人だった。出掛けるたびにお金がかかり、一緒にいると疲れた。今、大切に思っている女性はいるけれど、時々会って話すだけで十分だ。

 まして子どもを育てていく自信などない。四つ上の兄には子どもが2人いる。「なぜつくったのか」と疑問に思うほど生活は苦しそうだ。友人は手取り月10万円の給料で、親の援助を受けて何とか暮らしている。

 まだ見ぬ子より、生きている親を優先するのは当然だと思う。周りは「まだ若いんだから」と言うけれど、親をみとって一人で死ぬのも人生だと思っている。

 《10年間、同棲(どうせい)している。結婚も子どもも、必ずしも望んでいない。今のライフスタイルを変える気になれなくて…》

 「ねぇ」と声を掛ければ次に何を言おうとしているか自然と分かる。会社員の司さん(35)は、4歳上の彼女との関係を「長年連れ添った老夫婦」に例える。

 “共働き”で勤務時間が違うこともあり、ほとんど一緒に食事をしない。趣味に熱心な彼女は休日も積極的に外出する。お互いに時間を自由に使い、気が向いたら夜を共にする。それも最近は遠のき、今では一緒にお風呂に入るくらい。そんな生活に不満はない。

 一度だけプロポーズしたことがある。同棲を始めて間もない25歳のころ。「若いからまだ早い」と一蹴された。以来、自分から結婚に触れたことはない。まして子どものことを言い出せば、気楽な同棲生活も、彼女も失うかもしれない。

 20代のころは4人きょうだいの長男という立場上、漠然と「子どもをつくらなければ」と考えていた。そのうちに姉たちは結婚し、子どももできた。おいやめいをかわいがる両親を見ていると「長男の立場」も気にならなくなってきた。

 何より「彼女に心が依存している俺」が子の親になれなるのだろうかと思っている。

 《20年間、離婚して別れた子どものことを忘れたことはない。結婚も子どもも、望んでいる。もう一度やり直したくて…》

 自営業の進さん(45)は1年前、結婚相談所に登録した。「子どもが欲しい」という理由で。当初は30代を中心に見合いを重ねた。ところが、なかなか相手に心が通じない。そのうちに「順番が違う」と思い始めた。

 そういえば離婚の時、周囲から「子はかすがい」と何度も引き留められ、その度に違和感を抱いたことを思い出す。子どもに夫婦のつなぎ役を押しつけている気がしてならなかった。

 別れた原因は、育児ストレスで不安定になっていた妻を受け止められず、夫婦の心が離れたことだった。当時2歳だった長男とは離婚以降、一度も会っていない。長男に「申し訳ない」という思いはずっとある。

 6回目の見合いで交際が始まった女性は同い年。数えるほどしかデートしていないが、一緒にいると不思議と落ち着く。飾らない人柄に「結婚」の二文字がちらつき始めた。

 ただ、45歳という年齢を考えると出産の話題は出しにくい。子どもが欲しいから相手を探すのではなく、出会った人との子どもが欲しくなる‐これが幸せな結婚だという考えは今も変わらない。近いうちに子どもについて、きちんと話し合うつもりだ。それで彼女が望まないなら…。諦めてもいいと思っている。

 (文中仮名)

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 ●メモ 「独身に利点」8割超

 国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2010年)によると、未婚者(18~34歳)で「独身生活に利点があると思う」と答えた男女は共に8割を超えた。具体的な利点は「行動や生き方が自由」(男性65・1%、女性71・4%)が最も多かった。次いで男性は「金銭的に裕福」(28・1%)、女性は「広い友人関係を保ちやすい」(27・7%)だった。

 独身でいる理由を男性未婚者(25~34歳)に尋ねると「適当な相手にめぐり会わない」(46・2%)「結婚資金が足りない」(30・3%)など“結婚できない理由”がある一方で「まだ必要性を感じない」(31・2%)「自由さや気楽さを失いたくない」(25・5%)など“結婚しない理由”も挙がった。

 同項目の女性では「結婚資金が足りない」は16・5%にとどまり、男性には長引く不況や厳しい労働環境など経済的要因が大きく影響していることが分かる。


=2013/02/07付 西日本新聞朝刊=

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