【こんにちは!あかちゃん】第2部 少子化 オトコの理由<3>不妊の原因 自分にも

男性側にも不妊の原因があるケースも少なくない。治療には夫婦の協力が不可欠だ 拡大

男性側にも不妊の原因があるケースも少なくない。治療には夫婦の協力が不可欠だ

 《医師は告げた。「『女性の1歳』が不妊治療に与える影響は大きいんです」と。もっと早く真剣に考えていれば…》

 役所で働く靖さん(45)が6年前に結婚した時、妻は42歳だった。「赤ちゃんは少し落ち着いてから」という自分に対し「一日も早く」と妻。新婚旅行にも行かず、不妊治療を始めた。

 いろいろ試しても兆候は見られなかった。5カ月目、顕微授精に切り替えた。治療に向けた準備は男女で大きく異なる。自分は血液検査や採精くらいだが、妻は採卵の約1カ月前から投薬や排卵誘発剤の筋肉注射をしなければならず、そばで見ていて心が痛んだ。

 三つの病院で計8回、顕微授精を試した。治療を重ねるにつれて子宮内膜が薄くなることもあり、年齢もあって妊娠しにくくなるという。今更ながら「一日も早く」という妻の言葉の意味が理解できた。

 痛みに耐えて頑張る妻には感謝の気持ちしかない。それでも、生理が来るたびに落胆し「もっと若い人と結婚すればいいじゃない」と泣きじゃくる妻と時々けんかになった。治療を始めて3年、夫婦で話し合い、自然に任せることにした。

 納得はしている。ただ、中絶の話などを聞くと、今でも「1人分けてほしい」と思うことがある。

 《医師は告げた。「精子の運動能力が低いので、自然妊娠は難しいでしょう」と。予想もしない診断だった。まさか自分が…》

 小さな会社を経営する圭さん(35)がそう診断されたのは2年前、結婚して3年がたっていた。病院から帰ると、夫婦でほとんど会話を交わすことなく床に就いた。妻に申し訳ない。別れた方がいいとさえ思った。

 気付くと、妻が布団に入ってきていた。「できなかったら、それはそれでしょうがないよ。子どもが全てじゃないから」。救われる思いだった。一緒に治療を頑張ろうと決心した。

 体外受精を3回試みたが結果は出なかった。昨春から顕微授精に切り替えた。注射や薬代など1回にかかる費用は、助成制度を使っても40万円ほどかかる。経済的な負担ものしかかる。

 顕微授精の1回目に妊娠反応が出た。心が踊った。だが、お盆に実家へ帰ろうとした矢先、妻が「おなかが痛い」。流産だった。取り乱す妻をこれ以上落ち込ませまいと、普段通り接するのが精いっぱいだった。

 今年に入り、3回目の顕微授精を始めた。病院に来るたびに負い目を感じる。原因は自分でも、治療の痛みは妻が請け負う。代わってあげられない分、気持ちだけでも支えたい。ただ時々「いつまで頑張れば…」と思うことがある。

 《医師は告げた。「妊娠・出産は難しい」と。期待していなかったかといえばうそになる。少なからずショックだった。でも…》

 3年前、自営業の誠さん(45)は一つ下の妻と不妊治療の病院を訪れた。40歳を過ぎて諦めが大きくなっていたころ、評判を聞きつけた父親に勧められた。

 精子が少なく妊娠しにくいと診断された。妻も治療が必要だったが、乳がんを患った経験があり、妻のケースでは「再発のリスクが高まる」と告げられた。

 迷わなかった。妻の体が第一。双方に原因があるので申し訳なさも薄まった。医師の宣告が「二人で生きて」と背中を押された言葉に聞こえた。

 32歳で結婚してからも、排卵日を調べて積極的に、というほどではなかった。乳がんは幸い初期で、妻は手術後に就職もし、日常生活に支障はなかった。もちろん授かれば喜んだだろうが、再発の不安が先立ち、自分も仕事が忙しく、気付けば40代を迎えていた。

 診断後、実家を訪れ「不妊治療はしない」と宣言した。跡取りを期待していた70代の両親は少し残念そうにしつつも「おまえたちが決めたことなら」と尊重してくれた。

 晩酌をしながら会話を交わすのが、今の夫婦の日課となっている。高齢者施設の前を通ると「いずれはここね」と妻。このごろはよく「夫婦で歩むのもまた人生」と思うことがある。

 (文中仮名)

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 ●男性の問題

 世界保健機関(WHO)の定義では、定期的な性生活がありながら2年を過ぎても妊娠しない状態を「不妊」という。

 天神つじクリニック(福岡市)理事長の辻祐治さんによると、男性側の主因は精子の異常。精液中に精子を認めない無精子症▽精子の数が少ない乏精子症▽精子の運動率が低い精子無力症-などがある。同クリニックでは「数が少なくて動きも悪い乏精子症と精子無力症が合わさった症状」が最も多いという。勃起不全(ED)など性機能障害も男性不妊の原因となっている。

 不妊治療には、排卵日に性交渉をもつタイミング法▽採取した精子を子宮に注入して受精を助ける人工授精▽シャーレ上で卵子に受精させて子宮に戻す体外受精▽顕微鏡で見ながら卵子の中に精子を注入する顕微授精-などがある。

=2013/02/08付 西日本新聞朝刊=

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