NHK「ためしてガッテン」長寿の秘密は 共感→なぜ?→納得→お得感 視聴者に「伝わる」仕掛け

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収録を見守る演出担当デスクの北折一さん

 午後7時~10時。テレビ業界ではゴールデンタイムと呼ばれる時間帯で、18年間続く長寿番組がある。NHK総合の生活情報番組「ためしてガッテン」(毎週水曜日午後8時~)。各局が視聴率競争にしのぎを削る時間帯で、お茶の間で不動の人気を誇る番組の舞台裏を訪ねると、視聴者を引き込むプロの仕掛けが見えてきた。

 東京都渋谷区のNHK放送センターのスタジオ。落語家の立川志の輔さんと小野文恵アナウンサーの司会で、タレントの山瀬まみさんら3人のゲストが登場する番組の収録が始まった。

 この日のテーマは「花粉症マスク術&激やせ床ずれを招く謎の病」。「謎の病」の方は、極端に身長の低いイランの人々や、床ずれに悩む人たちを紹介しながら、一見関係がないような現象が実は「○○不足」という共通項があるという展開で進むが、答えはなかなか明かされない。

 VTRで随所にヒントを与えられ、頭の中に芽生えた「?」が分かったと思ったら「それはなぜ」というように次の「?」が続く。クイズに答える中で、ゲストと共に視聴者もつい考えてしまうような仕掛けが施されているのだ。

 そうして、ためにためたところで志の輔さんが「○○」の答えを披露し、専門家が登場。話題の背景とその解決策の解説を始めた。

 自分の経験からいえば、その時は分かったつもりになっても、聞いた答えはすぐに忘れる。だが、自ら考えて導き出した答えは頭に残る分、次への行動につながることが多い。

 「ガッテンしていただけましたでしょうか」。志の輔さんの決めぜりふに、収録風景を見ていた私も、心の中で「ガッテン」した。

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 1995年にスタートしたこの番組の放映数は約800本。草創期からディレクターとして参加し、3年目から演出担当デスクとして、長年番組を取り仕切る北折一さん(48)に構成のポイントを聞いた。

 -スタッフの構成は?

 「私の下に12人のディレクターがおり、1人が3カ月に1本のペースで番組を作っています」

 -3人のゲストは答えを知っている?

 「レギュラーの山瀬さんを含め、ゲストには一切知らせていません。番組の空気感を大事にしているので、司会の問い掛けにどう反応するかは、全て出たとこ勝負。一つのことを伝えても受け止め方は人それぞれなのは、視聴者もまた同じこと。いろんな考えを思い巡らせてもらいながら、最後は一つに集約し、番組の最後に納得の『ガッテン』をもらえればいい」

 -見る人をやる気にさせるこつは?

 「それは(1)思わず「そうなんだよな」と思わせる『共感』(2)その先の答えを知りたくなる『何だろー感』(3)すとんとふに落ちる『納得感』(4)見続けたら必ずいいことがある『お得感』-。これら四つの『××感』があれば、問題設定が人ごとから自分事になり、視聴者の心理は、やらねばならぬではなく、やってみたいという方に動きます」

 「その対極にあるのが、よくある『望ましい日本型食生活をしましょう』というような『△△しましょう』が連続する呼び掛け。私はこれを『魔性の攻撃』と呼んでいます。これは言葉を柔らかく置き換えているだけで、中身は上から目線そのものです」

 -言っていることは正しくても、正しい話を正しくされても心に残りにくい。

 「生活習慣病対策は、脅すやり方で行動を変えさせようとしても、長続きしません。そうではなく、ついつい食べ過ぎてしまうように、ついつい見て、ついつい実行してしまうような番組作りを心掛けています」

 「『伝える』と『伝わる』は、似ているけれど違う言葉。いい情報を手間暇かけて作っても、相手に伝わらなければ情報ですらない。皆に知ってほしい情報であればあるほど、確実に届くような工夫が必要です。相手が分かりたくなるよう、聞きたくなるよう仕向けること。これは番組作りに限らず、家庭や学校、職場など、いろんな局面で使えるテクニックだと思います」

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 冒頭に紹介した「花粉症マスク術&激やせ床ずれを招く謎の病」は、きょう13日午後8時から放映される予定(再放送は19日午後4時5分)。「ためしてガッテン」の人気の秘密、ガッテンしていただけましたでしょうか。

=2013/02/13付 西日本新聞朝刊=

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