内部障害者 理解を 外から見えぬ重い持病 マーク普及 いまひとつ

いつも持ち歩くバッグに、内部障害者を示す「ハート・プラスマーク」を付けている中原義朗さん 拡大

いつも持ち歩くバッグに、内部障害者を示す「ハート・プラスマーク」を付けている中原義朗さん

 福岡市営地下鉄の優先席に今月から、心臓などに外見からは分からない障害がある内部障害者を示す「ハート・プラスマーク」と、妊娠中の女性を示す「マタニティマーク」が掲示されている。妊娠のマークは2006年に厚生労働省が選定して認知が進んでいるが、内部障害者のマークは存在自体があまり知られていないという。内部障害者とそのマークの実情を調べてみた。

 内部障害者は、身体障害者手帳の交付を受けた人のうち、体の内部に機能障害がある人。(1)心臓(2)腎臓(3)呼吸器(4)ぼうこう・直腸(5)小腸(6)肝臓‐の機能障害にエイズも加えられている。06年には全国に107万人おり、身障者全体の約3割。障害の等級でみると、最も重い1級の人が55・8%に上るのが特徴だ。

 日常生活で内部障害者は(1)公共交通機関の優先席や身障者用駐車場を使うと白い目で見られる(2)周囲に気兼ねして優先席や駐車場が使いづらい‐といった不自由を味わっているという。

 ハート・プラスマークを考案したのは、名古屋市のNPO法人ハート・プラスの会。心臓疾患などの内部障害者や医師が6年前に設立した。国際的に普及している障害者マークは車椅子を図案化しているが、外見上は健常者と変わらない内部障害者にはそぐわないため、新たなマークを作ったという。対象には内部障害者のほか、身障者手帳を交付されていない内臓疾患の人も含めている。

 マークは、体の内部を意味する「ハート」に、思いやりの心を加えるという意味で「プラス」のマークを添えて図案化。会のホームページから誰でもダウンロードして使用できる。

 会は、マークを全国の公共交通機関や身障者用駐車場に広めたい考えだが、公的なものでないこともあり道は半ば。マークの掲示報告が全くない県が全国に22あり、うち九州では佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島の5県に上る。事務局長の加藤陽子さんは「通勤ラッシュで優先席が必要な都市部では認知が進んできているが、人口密度の低い地域ではいまひとつ。ただ、そうした地域にも身障者用駐車場は必ずあるので、啓発を続けていきたい」と話す。

 「まさか自分が内部障害者になるなんて、思ってもいなかった」

 ハート・プラスの会の会員で、福岡市西区で暮らす中原義朗さん(62)は8年前、広島市で補聴器メーカーの営業所長を務めていた。クリスマス前の12月23日夜、疲れていたが職場の忘年会に出席。2次会でカラオケを1曲歌ったところで胸の激痛に襲われ意識を失った。急性心筋梗塞。「心臓が2度止まったが、AED(自動体外式除細動器)のおかげで助かった」

 心臓の半分が壊死(えし)して機能障害が残り、身障者手帳4級を交付された。職場に復帰したものの、不整脈や立ちくらみ、息切れが突然襲う。出張先の東京の地下鉄で卒倒し、救急車で運ばれた。「体がつらい、座りたいな、と思っていたら、バタッと倒れていた」

 この後、会の存在を知り入会。パソコンでダウンロードしたハート・プラスマークを自分で加工して、いつも持ち歩くバッグに取り付けている。乗り物では、マークを前にしてバッグを膝に載せ、周囲から見えるようにしておく。「そうすれば、私が内部障害者と分からなくても、何か持病があるとは感じてくれる」。今では外出時、マークを忘れると不安になるという。

 中原さんはこう願う。「見た目は普通でも、実は命に関わる病気を抱えた人もいる。みんなが少しずつ思いやりながら、暮らしやすい社会になれば」

 ●多様性知ることから

 福祉担当の編集委員としてお恥ずかしい話だが、つい最近まで「内部障害者」という言葉をよく知らなかった。取材のきっかけは、読者の電話を紹介する本紙の「テレホンプラザ」(福岡県内は夕刊)欄に載った、ある男性の声だった。男性には人工透析の妻がいる。「健常者と見かけは変わりなくても、妻は内部障害者なのです」と訴えておられた。

 恐らくこのご夫妻は、車椅子を図案化した身障者用標識を掲示して、身障者用駐車場を利用されているのだろう。ところが、見た目には障害がないので、周囲の人から「不正使用」とあらぬ疑いを受けた…。

 記事で紹介した中原義朗さんは、そんな疑いを被らないようハート・プラスマークを使う。「マークを普及させるのに、私も微力を尽くしたい」と言われた。

 広いこの世界にはいろんな人が生きている。人間の多様性を知ることから、私も始めたい。


=2013/02/14付 西日本新聞朝刊=

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