不妊治療 経済的負担軽減を 助成制度も自由度低く NPO法人「Fine」 今月末までアンケート実施

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 不妊に悩む夫婦は年々増え、現在では6組に1組が検査や治療の経験があるという。ところが体外受精などは健康保険の対象外で、高額な治療費を負担できず、治療を諦めてしまう夫婦も少なくない。国は助成制度を設けたものの「不十分」との指摘があり、民間団体がアンケートや署名集めに乗り出すなど、経済的負担の軽減に向けた動きも展開されている。

 体外受精や顕微授精の費用は病院によってばらつきがあるものの、1回当たり30~40万円。高度な治療に進むほど負担感が増す。

 不妊の人を支援するNPO法人Fine(東京)が2010年に実施したアンケート(回答数1111人)によると、治療費の総額は「10万~50万円未満」「100万~200万円未満」がそれぞれ4分の1を占め、300万円以上払った人も1割ほどいた。経済的理由で高度な治療へ進むのをためらったり、延期したりした人は84%に上った。

 こうした負担を軽減しようと、厚生労働省は04年度に助成制度を新設。支給数は11年度だけで11万2600件に上り、8年で約6倍に増加。自治体によっては少子化対策として助成金を上乗せするところもある。

 ただ、患者からは「使い勝手がよくない」との声も上がる。1回当たりの助成は15万円が上限で、1年目3回、2年目以降は年2回までと規定(5年間で通算10回、最大150万円)。夫婦所得が730万円未満という制限もあるからだ。

 36歳で治療を始めた埼玉県内の女性(44)も「怖くて総額を計算していないけれど、子ども1人を育てられるくらいは使った」と振り返る。体外受精、顕微授精を合わせて20回以上試み、病院への交通費も含めると、最も多かった年には300万円かかったという。

 当初は仕事の合間を縫って通院したが職場に言いづらく、精神的、時間的な負担から両立が難しくなって退職した。「貯金も使い果たしてしまい、これから子どもを授かっても経済的にきちんと育てられるのかという不安も出てきた」。今は治療を休んでいる。

 少子化対策に力を入れるフランスでは、出産や不妊治療に関わる医療費には全て健康保険が適用される。利用者が42歳までの間は人工授精6回、体外受精は4回まで全額国負担。若い時期に集中的に費用を負担して効果的に検査や治療を進める狙いがあるという。

 一方、日本の厚労省は新年度から、凍結しておいた受精卵を子宮内に移植する「凍結融解胚移植」と、採卵を試みたが質のよい卵が得られず治療を中止した場合の助成金を、7万5千円に半減させる方針。Fine理事長の松本亜樹子さん(48)=長崎市出身=は「経済的不安で治療計画に影響が出そうという声が多く寄せられている」と話す。

 民間の保険商品には解禁の動きもある。金融審議会で検討が進み、6月ごろには結論が出る見込み。業界は公的支援の届かない部分を補う保険の需要は高いとみており、審議会で合意が得られれば、数年後には商品化されそうだ。

 松本さんは「20代と40代では経済状況も治療の方針も違う。もっと自由に運用できる助成制度に見直すべきだ」と話している。

 Fineは2月末まで、ホームページ(http://j-fine.jp/)を通して経済的負担に関するアンケートを実施中。回答者から抽選で千人に500円のクオカードを贈る。結果を踏まえ、5月には助成の増額と制度の見直しを求める国会請願を行う。

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 【ワードBOX】不妊治療の種類

 人工授精は、排卵を予測して採取した精子を直接子宮内に注入するもの。費用は5千~2万円程度で国の助成の対象外。体外受精、顕微授精は「高度生殖医療」と呼ばれ、卵巣から卵子を取り出して体外で受精させ、分割した受精卵を体内へ移植する。体外受精はシャーレ上で卵子に精子をかけて授精を助け、顕微授精は細いガラス管で精子を吸引して卵子内に注入する。


=2013/02/16付 西日本新聞朝刊=

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