「足育」の試み<上>足指体操 運動能力アップ 3保育所 2ヵ月で効果 福岡・筑後地区 跳び箱や行進、ジャンプ

手の指を足指に絡ませるFC方式の体操 拡大

手の指を足指に絡ませるFC方式の体操

 ■くらし天気図■

 足の裏を元気にすることで健康に過ごそうという「足育(そくいく)」が福岡県で試みられている。県筑後地方保育士会(187所)と福岡市内の医師らが協力し、簡単な足の体操によって園児の運動能力を向上させるプロジェクトに挑戦。この体操はフット&ケア、フクオカ&チクゴの頭文字から「FC方式」と名付けられ、保育士たちは11月に岩手県である全国保育士研究大会で成果を発表しようと意気込んでいる。

 ■手絡ませ前後に

 福岡県八女市の星野保育所「星光園」(森田道治園長)。

 「FC方式、始めまーす」「はーい」

 保育士の掛け声に合わせ、車座になった園児たちが足の指に手の指を絡ませ、前後に5秒ずつ手を動かし始めた。「握足手」という体操だ。足指をぐっと反らせたり、逆に前に倒したり。右足の次は左足。記者もやったが、園児ほどには足指は曲がらない。日頃使っていない証拠だという。

 「FC方式を取り入れた園からは、園児の跳び箱がうまくなったなどといった報告が上がっています」。そう話すのは、主任保育士の森田さゆりさん。森田さんが「足育」に取り組んだのは「子どもの体に異変が起きている」という教育者としての危機感だった。

 バランス感覚が悪い▽すぐに転ぶ▽転び方が下手▽疲れやすい‐。何か打つ手はないか。保育士仲間で集まると、自然とそんな話になることが増えていた。

 ■左右で20回ずつ

 そんな折、2年前に受講したセミナーで講師が発した一言が、森田さんの心を捉えた。「子どもの足の裏を見たことありますか」

 確かに園児とは毎日接している。ただ、顔や行動は毎日見ても、足の裏を意識したことはない。早速、保育士会で園児の足形をとるなどして調査を開始。2012年度からは、足の治療によって腰痛や肩凝りなどを改善する福岡市博多区の「みらいクリニック」院長で内科医の今井一彰さんと、同院付属フットケアセンター長で理学療法士の湯浅慶朗さんの指導の下、2年かけて足裏の研究を進めることにした。

 まず湯浅さんが各園に出向き、園児の靴の状態や、はだしか上靴か、体育教室の実施の有無などを調べたが、明確な差が出ない。

 ならば原因究明より改善を優先しようと方針転換し、三つのモデル園を設定。登園時に右足と左足で各20回、FC方式を実施する群とやらない対照群を設けて昨年9月から2カ月間、(1)真っすぐ立った状態からかかとをつけてしゃがめるか(2)ジャンプ時に柔らかく膝を折って着地できるか(3)行進時に手足が互い違いに動いているか‐の状態をチェックし、点数化した。

 するとジャンプと行進で、FC方式をやった群の運動能力が、やらない群に比べて向上。その後、対照群も4カ月間、FC方式をしたところ、同様に改善が見られた=グラフ参照。

 ■全国に広げたい

 なぜ効果があったのか。

 「子どもも含め、現代人は運動不足や合わない靴など、さまざまな要因によって足指が縮こまっている。それがFC方式によって足指が伸び、5本の指でバランスよく接地して立つというヒト本来の機能を取り戻したからではないか」。今井さんはそう分析する。

 使った筋肉は鍛えられ、使わなければ退化するのは動物の宿命。幼児においても、マットや跳び箱などのいわゆる体育的な運動より、鬼ごっこや木登りのような遊びの方が自然に体の使い方を覚えるとされる。そうした質のよい遊びの不足が、機能低下につながっているとする研究者もいる。

 森田さんは「遊び方の見直しも含め、目の前の子どもが良くなるなら何でもしたいというのが保育士。さらに研究を深め、園から家庭、筑後から福岡、そして全国にFC方式を広げたい」と話している。

 ◇「下」は27日に掲載予定。「みらいクリニック」から足の治療の現場をリポートします。

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 ●FC方式を導入したモデル園での比較

 ▽行進=(1)手足が交互に出る(2)ばらばらに出る(3)同じ側の手足が一緒に出るトカゲ歩きになる

 ▽ジャンプ=5回行って(1)膝を曲げながらつま先着地(2)膝は曲がるがかかとから着地(3)膝が伸びたまま着地

 それぞれ(1)を2点、(2)を1点、(3)を0点として集計し、比較した。


=2013/02/20付 西日本新聞朝刊=

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