長崎グループホーム火災 問題点は 命守るコスト論議を 地域との連携構築も大切

「グループホームの防災には、共助の精神で取り組むべきだ」と語る賀戸一郎教授 拡大

「グループホームの防災には、共助の精神で取り組むべきだ」と語る賀戸一郎教授

 4人の高齢者が亡くなった長崎市の認知症対応型グループホーム「ベルハウス東山手」の火災は、施設の防火態勢の不備に加え、長崎市の指導が不十分だったことなど、複合的な要因が明らかになってきた。高齢者福祉に詳しい西南学院大学の賀戸(かど)一郎教授(65)=社会福祉学=に、火災の背景に浮かび上がる高齢者介護施設をめぐる問題点を聞いた。

 -高齢者施設では、2009年に群馬県渋川市で10人、10年に札幌市で7人が亡くなる火災が発生した。

 「長崎県では06年にも、大村市のグループホームで7人が亡くなる火災があった。その教訓が生かされなかったのが残念だ」

 -認知症の高齢者は昨年初めて300万人の大台に乗り、25年には470万人に達する。その受け皿となるグループホームに、防災上の問題点はないのか。

 「グループホームは急速に増えているが、定員が1ユニット9人で最大2ユニットまでの小規模施設だ。そのため、昔ながらの民家や寮などを再利用する例が多い。耐火性のある新建材を使っていないので、火が付けばいっぺんに燃えてしまう。バリアフリーの導入が不十分な所もあり、避難に支障が出る恐れがある」

 -そうしたグループホームの火災時の危険性をチェックする態勢は、十分だったのだろうか。

 「長崎県認定の第三者機関が昨年1月に作成したベルハウス東山手の自己・外部評価結果を調べた。それによると、火災時の対策として(1)昼夜を問わず利用者が避難できる方法を全職員が身につける(2)地域と協力態勢を築く-を目標に掲げていた。ところが、自己評価も外部評価も、消防署との火災訓練などを実績として挙げているだけで、防火態勢の不備には全く触れていなかった。訓練もどこまで実態に即した形でやっていたのかは疑問だ。評価自体が形骸化しており、首尾一貫したチェック態勢はなかったといえる」

 -出火時には夜勤職員が1人だけだった。

 「グループホームの人員基準では、夜勤職員は常時1人以上配置しておけばよい。ホームの収入である介護報酬が抑制傾向にある中、小規模施設に複数の夜勤者を置くような経営努力を求めるのは無理がある。それを補うのが、スプリンクラーなどの防火設備だ」

 -そのスプリンクラーも設置されていなかった。

 「それが、これほどの犠牲者を出した一番の原因だ。ただ、ベルハウスは、消防法で設置が義務付けられる床面積275平方メートル以上ではなかった」

 -総務相が、小規模施設にも設置義務付けを検討する考えを示したが。

 「早急にやってほしい。ただ、小規模施設はどこも運営が苦しい。国は設置費用を最大限援助すべきだ」

 -現場が斜面地だったことも救助が遅れた要因だ。

 「九州にはほかにも、北九州市の八幡など、坂の街が多い。消防車が入れないような場所には福祉施設の開設を認めないといった制度改正も必要だ」

 -長崎市の対応にも不手際があった。防火扉を付けるよう指導した後に実際に設置されたかは確認せず、立ち入り検査では排煙窓や非常用照明の不備を見落としていたという。

 「認知症の人を尊厳ある人間として見ていないのではないか、とすら感じてしまうお粗末さだ。高齢者の終(つい)の棲家(すみか)をどこに選ぶかは、これからの地域社会が抱える大問題だ。国と自治体はもっときちんとした防火基準を確立してほしい」

 -施設と地域社会との関わり方は。

 「特に防災面で住民との連携態勢を築くことが大切だ。施設の運営推進会議に住民を積極的に受け入れ、日ごろから意思疎通を図っておくべきだ」

 -認知症ケアにはもともとどんな場所が良いのか。

 「認知症の人は多人数の介護職が交代制で変わるような大規模施設では、不穏・混乱が生じやすい。家庭的な雰囲気で顔なじみの人にケアされる小規模施設が精神を穏やかに保てて、ケア環境としては最適だ。大規模から小規模へ、施設から地域へ、が欧州など世界的な流れでもある」

 -繰り返す火災の教訓を社会にどう根付かせるか。

 「高齢化の進展で介護・医療が成長分野と捉えられ、建設業などの他業種参入が続いている。そんな状況の中、今回の火災を機に、認知症の人はやはり防火設備が整った大規模施設に集めるべきだという論調が台頭するのが心配だ。大きな施設を建ててもうけようといった利益至上主義を、福祉分野に持ち込んではいけない。豊かで安全な老後を過ごすため、人命を守るのに必要なコストを、国民全体で論議してほしい」

    ×      ×

 【ワードBOX】長崎グループホーム火災

 8日夜、長崎市のグループホーム「ベルハウス東山手」で発生。入所していた要介護2~4の女性3人(88、86、77歳)と、同じ建物に住む女性(82)が一酸化炭素中毒で死亡し、職員を含む8人が病院で手当てを受けた。長崎県警は2階の男性の居室を出火場所と断定し、加湿器から出火した可能性が強いとみている。長崎市はスプリンクラーの設置を促していたが、設置されていなかった。

=2013/02/21付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ