育児休業、取りやすい会社へ 「戦力」と捉えて 業務の効率化図る 働き方見直す契機に 鍵は男性の意識改革

復職後は残業をしない勤務制度を利用している「ふくや」の松田みな子さん。「集中力が増して仕事の効率が上がりました」と話す 拡大

復職後は残業をしない勤務制度を利用している「ふくや」の松田みな子さん。「集中力が増して仕事の効率が上がりました」と話す

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 育児休業が法律上の権利として認められるようになって20年以上が経過した。この間、女性の社会進出が進み、共働き世帯が増えるなど雇用環境は変化してきた。ところが、いまだに7割近くの女性が出産を機に退職している現実がある。制度定着に向けた課題は何か。子育て支援に力を入れる企業を訪ね、解決の鍵を探った。

 「せっかく育てた人材が出産で退職するのは痛手。多少のブランクが生じてもキャリアを積んで戦力となってほしい」。辛子めんたいこ製造販売の「ふくや」(福岡市)で人事を担当する山中崇彦さん(40)は、そう力を込める。

 1992年に育児休業法が施行され、ふくやも支援制度の利用促進に取り組んできた。従業員約600人の7割を女性が占め、毎年10人程度が育休を取得。復職後も短時間勤務など6種類の勤務形態から選択できるようにしている。

 4年ほど前から制度を利用する松田みな子さん(35)も「育休を取るのが当然という雰囲気が会社にある」と実感する。2003年には、会社のトップが両立支援を宣言する福岡県の制度「子育て応援宣言企業」の第1号として登録。会社側が積極姿勢を示したことで、上司に堂々と申請できるようになったという。

 新たな課題も見えてきた。さらに制度の利用者が増えれば、現場が負担増に耐えられなくなるのではないか。原職復帰が基本だが、勤務体系や本人の希望で復職後の配置に頭を悩ますことも増えてきた。それでも「採用活動では育児支援に関する質問が多い。優秀な人材を確保するためにも不可欠」(山中さん)としてさらなる制度の充実を図る考えだ。

 育児支援制度の整備を契機に、従業員の働き方を見直している会社もある。従業員約1万人の衛生陶器メーカー「TOTO」(北九州市)は11年度、約170人が育休を取得した。09年度の1・5倍。当該職場では必然的に、人手不足をカバーしようと無駄な仕事を整理し、業務の効率化や情報共有が進んだという。

 さらに不要な残業を省いて労働時間を見直すなど改善を進めており、人財開発本部の比留澤(ひるさわ)温子さん(45)は「制度設計と併せて、全社員が家庭と両立できる働き方を実現したい」と意気込む。

 一方、小さい会社ほど欠員の影響は大きくなる。昨年7月からは、短時間勤務の導入などを義務づけた改正育児・介護休業法が、従業員100人以下の企業にも適用されたが、現実は厳しい。

 化粧品などの卸業「アイリス」(福岡市)は18人のうち4人が育休中だ。常務の岡山寛さん(40)によると、1人2割増しで働いても一時的な売り上げ減は避けられないという。

 国は、両立支援に取り組む中小企業に助成金を出している。しかし、経営者からは「金額が少ない」「制度が複雑で手続きがややこしい」といった声が出ている。岡山さんも「国が少子化対策に本腰を入れるというなら、もっと手厚い支援をしてほしい」と訴える。

 2・63%‐。11年度の男性の育休取得率だ(国の雇用均等基本調査)。休業中の収入減、昇進への影響を恐れて二の足を踏む男性も少なくない。

 そうこうしているうちにも高齢化は進んでおり、介護休業制度の充実も求められてくる。福岡労働局雇用均等室長の久保充代さんは「介護は突然必要になるケースがあり、育児と違って期間の見通しも立ちにくい。両立支援は男性にとってもひとごとではありません」と指摘する。

 誰もが生活と調和の取れた働き方をできる職場づくりをいかに実現するか。久保さんは「夫が期間の半分を休めば、妻の職場の負担は半減する。女性の多い企業に偏った努力だけでは限界があるという認識が欠かせません」として、社会全体、特に男性の意識改革の必要性を強調していた。


=2013/02/23付 西日本新聞朝刊=

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