【こんにちは!あかちゃん】第3部 私は産めますか?<1>自分の卵巣年齢知って

AMH値は血液検査で分かるが、検査のみを受けられる病院はまだ少ない 拡大

AMH値は血液検査で分かるが、検査のみを受けられる病院はまだ少ない

 社会進出や晩婚化、ライフスタイルの変化に伴い、妊娠・出産を先延ばしにする女性が増えている。第1子出産時の母親の平均年齢は、最新の2011年調査で初めて30歳を超えた。一方で不妊に悩む夫婦は年々増え、今や6組に1組が検査や治療の経験があるとされる。産みたいのに、産めない-。そんな状況を防ぐために何ができるか、考えてみたい。

 《いつかは子どもが欲しい。だけど今は、仕事に趣味に、やりたいことがたくさんある。結婚もしていないので、すぐに産むのは難しい。友人は最近、不妊治療を始めたらしい。私はいつまで産めるのかな-》

 この連載を担当する私(31)がAMH検査を受けたのは、そんな小さな不安からだった。AMHとは「抗ミュラー管ホルモン」の略称で、育ちはじめの卵胞から分泌されるホルモンのこと。「卵巣年齢が分かる」ともいわれ、卵子がどのくらい残っているか(卵巣予備能)の目安になる値として最近、注目されている。

 結果は-。「AMH値は2・12ナノグラムです。38~39歳レベルでしょう」。そんなに低いの? どう受け止めたらいいのだろうか。

 もっと詳しく知りたい。AMH検査を先駆けて導入し、これまで4千人以上が検査を受けているという名古屋市の不妊治療専門クリニックの医師、浅田義正さん(58)に尋ねてみた。

  どう受け止めたらいいのですか?

  値が低い=妊娠できないではありません。とはいえ、妊娠には適齢期がある。妊娠のしやすさは20代前半がピークで、30代半ばから低下します。ところが「生理があるうちは妊娠できる」「体外受精は万能」などと間違った
認識を持っている人が多いのです。

  なぜ年を取ると妊娠しにくくなるのですか?

  精子が精巣で毎日作られるのに対し、卵子は胎児の時に作られて以降、増えることはありません。出生時で約200万個、初めて生理が来た時に30万個になり、思春期以降は月千個ほど減っていく。保存されている卵子も年齢とともに衰えていきます。卵子の減少、老化が原因です。

  検査のメリットは?

  性周期の影響による値の変動が少なく、血液検査だけで測ることができます。個人差があるため「正常値」は設定できず、同年代と比べてどうかを基に卵巣予備能を判断します。保険適用外なので5千~1万円程度です。

  私の生活習慣が悪かったんでしょうか?

  それはほとんど関係ありません。もともと原始卵胞が少なかったり、卵子の減るスピードが速かったりして差が出ます。年齢とも必ずしも相関しておらず、20、30代で突然「早発閉経」するケースもあります。ただ、卵巣予備能が低下していても、生理は正常に起こるため気付かないことが多いです。

  AMH値がゼロだと妊娠できない?

  血中に分泌されるホルモンの値がゼロなだけで卵子は残っており、妊娠は可能です。妊娠率に影響するのは、年齢に相関する「卵子の質」。AMH値は不妊治療がいつまで可能か、どう進めるかの方針を決める上で役立ちます。

 浅田さんは2年ほど前から、AMH検査を患者以外の一般女性にも実施するようにした。「不妊治療に来て初めて卵子の話を知り、涙を流す患者さんがあまりにも多くて。これではいけない」と実感したからだ。現在は月に1回、普及啓発セミナーを開き、卵子の正しい知識や検査の必要性を訴えている。

 ただ、一般の産婦人科ではほとんど実施されていない。お産の現場に生殖医療の知識が乏しいことが一因とされる。不妊治療専門の病院では実施しているものの「きちんと説明しないと『値が低いと妊娠できない』と誤解されるかもしれない。不妊治療で手いっぱいで、一般の検査まで受け入れる余裕がない」(福岡市の医師)のが現状だ。

 浅田さんは「子宮がん検診のように、AMH検査が広まってほしい。まずは自分の卵巣予備能を知り、結婚、妊娠、子育ての計画を立て、優先順位を決めて悔いのない人生を送ってほしいから」と願う。

 《その言葉が私の心にずっしり響いた。自分の体のことなのに、私は何も知らなかった。今、気付けて良かったのかもしれない。もっと妊娠や出産のことを学びたい。みなさんにも、この連載を通して知っていただけたら…。》

=2013/03/05付 西日本新聞朝刊=

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