【こんにちは!あかちゃん】第3部 私は産めますか?<2>「産み時」選べる社会に

福岡市で開かれた「いつか産みたいあなたのために」をテーマにしたセミナーには定員の倍以上の応募かあった 拡大

福岡市で開かれた「いつか産みたいあなたのために」をテーマにしたセミナーには定員の倍以上の応募かあった

 《排卵日にセックスをすれば、妊娠すると思っていた。いかに避妊が重要かは学校で習ったけれど、年を重ねるにつれて卵子が老化し、少なくなるなんて知らなかった。誰も教えてくれなかったから》

 1月下旬、福岡市男女共同参画推進センター・アミカスで開かれたセミナーには、私(31)と同じ思い、同じ世代の女性がたくさん参加していた。テーマは「いつまで産める? 産んだらどうなる? いつか産みたいあなたのために」。定員30人に対し、60人以上の応募があったという。

 その中の1人に声を掛けた。「仕事が忙しく、ストレスで生理が狂っても仕方ないと、ほったらかしていた」という34歳独身。妊娠を考えたことも、基礎体温を測ったこともなかった。会社の後輩が不妊治療中と聞いて「正しい知識を持ちたい」と参加したという。

 講師は、福岡市で不妊治療専門クリニックを開く詠田由美さん(57)。「仕事に終着点はありませんが、産み時は必ず終了する日が来ます。ライフスタイルが変化しても、女性の体の仕組みは変えられません」。説明してくれた内容は初めて聞くことばかりだった。

 詠田さんの話を要約してみた。参考にしてほしい。

 〈最近話題の「卵子の老化」。卵子のもとは胎児の時に作られ、新しく作られることはなく減少します〉

 〈卵子のもとは、減数分裂して卵子になります。年齢とともに老化して分裂に必要なエネルギーが不足するため、染色体異常が起きて受精や着床しなかったり、流産しやすくなったりします。ダウン症も染色体異常の一つ。妊娠率は32歳から徐々に下がり、37歳から急速に低下し、流産率は40歳で40~50%になります〉

 日本産科婦人科学会によると、2010年に体外受精をした人のうち、生まれた割合(生産率)は35歳で16・3%、40歳では7・7%、45歳は0・6%だった=グラフ参照。

 〈妊娠は、ときに死に至る危険なこと。年齢が上がるほど妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などトラブルが起こりやすく、体を守るために閉経します。晩産化は30~40代の出産が増えたというより、20代が減って相対的に高齢出産の割合が高まったのが現実です〉

 〈1986年に男女雇用機会均等法が施行された一方で、働きながら産む環境が整わず、妊娠を遅らせる女性が増えました。一生精子を作り続ける男性と、卵子がなくなる女性では根本的に体の構造が違う。仕事と産み時について考えることは、女性が働く上でとても大切なことです〉

 「私のように、後悔する女性を一人でも減らしたい」。このセミナーを企画した坂井こずえさん(40)には、特別な思いがあった。

 1歳上のパートナーとは20年来の付き合い。特に子ども好きではなかったし、育児にも自信が持てなかった。非正規職員で経済的に不安定な上、妊娠したら職を失うかもしれない。出産そのものも怖い。産む不安が大きくて先延ばしにしてきた。

 親友の妊娠がきっかけとなり、2年前から排卵日をチェックするなど妊娠に向けた“妊活”を始めた。しかし、努力すれば結果が出る勉強や仕事のようにはいかない。「なぜ私だけ」と落ち込む日々、焦りや苦しみを分かってくれない彼。「若い時から妊娠の知識を持ち、人生設計をしていれば…」と何度も思った。

 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)という概念がある。国連人口開発会議は、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由を持つことと定義する。

 坂井さんは「生き方の選択肢が広がったからこそ『こんなはずじゃなかった』と後悔しないように、正しい知識を得ること、その上でどうしたいか選ぶこと、これが今のリプロだと思うんです」と力を込める。

 《女性にとっては、子どもを産む時期と仕事で活躍する時期が重なる。本来は両立できる社会でなくてはいけないのに、どちらかを選ばざるを得ない。「不妊」は個人の問題ではなく、社会がつくり出しているのかもしれない》 


=2013/03/06付 西日本新聞朝刊=

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