【こんにちは!あかちゃん】第3部 私は産めますか?<3>不妊治療は計画立てて

不妊治療中の夫婦。「子どもがいたらいいけれど、二人の生活もすごく楽しい」 拡大

不妊治療中の夫婦。「子どもがいたらいいけれど、二人の生活もすごく楽しい」

 《子どもが欲しいカップルに福音をもたらしてきた不妊治療。今や特別なことではなく、私(31)の周りにも経験者がたくさんいる。ただ、必ずしも出産に結びつくとは限らない。もしもの場合、どんな気持ちで臨めばいいのだろう》

 1978年に世界初の体外受精児が誕生して以降、不妊治療は急速に広がった。日本産科婦人科学会によると、2010年の体外受精の治療数は24万周期を超え、これまでに生まれた赤ちゃんは27万人に上る。

 福岡市で専門クリニックを開く古賀文敏さん(45)は「治療に隠れて通う人も多かったが、最近は友人同士で話せるようになり、治療費の助成制度も始まって随分と受けやすくなっています」と話す。この30年で技術も進歩し、妊娠率は向上した。それでもやはり、治療には限界がある。

 「不妊治療は不幸なことのように思われがち。パートナーがいて、子どもをもつ準備ができることは、本当は恵まれているんです」と古賀さん。そして強調するのは「妊娠、出産は決してゴールじゃない」ということだ。低出生体重児として生まれることもあれば、子育てと仕事の両立に苦労するかもしれない。古賀さんのクリニックでは全国でも珍しく、助産師が妊娠や出産後のサポートにも携わっている。

 「自分だけが周りから取り残されている。でも、子どもが生まれたらこの時間は動きだすんだって、ずっと思っていました」。福岡県久留米市出身の堀田敬子さん(48)は、30歳から10年間、不妊治療に臨んだ。大手書店の営業職として周囲に期待される一方で、あまりに多忙でストレスも大きかった。治療に専念しようと35歳で退職を選んだ。

 体外受精、顕微授精を計十数回試み、治療費は数百万円に上った。一方で同僚だった夫は順調にキャリアを重ねていく。自分ばかりが犠牲になっている…。いら立ちが募り「私は生きていていいのかな」と自己否定感にさいなまれた。でも子どものいる妹や友達には打ち明けられなかった。

 行き場のない思いに耳を傾け、救ってくれたのが、インターネットで知り合った治療仲間だった。浮き沈みする気持ちをすべて吐き出し、楽になれた。「あのころの自分に、一人で抱え込まないでと伝えたい」。40歳で治療をやめ、不妊体験者を支援するNPO法人Fine(ファイン)へ入った。現在は、大阪府豊中市で不妊治療専門のカウンセラーをしている。

 -子どもが欲しいのになかなか授からないとき、堀田さんはどんなアドバイスをくださいますか。

 「まずは立ち止まって、パートナーと二人でどんな家族をつくりたいのかを話し合ってほしい。すぐ不妊治療を、と考えがちですが、人生に起こることをあるがまま受け止めて自然に委ねる▽里親や養子縁組などで親になる-という選択肢もあります」

 「治療に時間を費やすうちに年を取り、里親になるのが難しくなるケースもある。自分の子だから欲しいのか、子どもと一緒に成長して家族をつくりたいのか、二人の気持ちを確認することも大切です」

 -実際に治療をすると決めた場合、どうすればいいのでしょうか。

 「治療はパートナーとの協力があって初めてできるもの。不妊の原因は男女半々といわれ、原因不明のケースも多い。結果、必ず妊娠するとも限りません。そんな特徴を踏まえた上で、いつまで、どのような治療をしていくか、年齢や経済状況を考えて治療計画を立てることが重要です」

 「一人じゃないことを忘れないで。パートナーや家族、医療関係者…、みんなをサポーターだと思って、どんどん相談しましょう」

 《親戚の「子どもはまだ?」という何げない一言に傷つけられることがあるかもしれない。治療に対する温度差から、パートナーとの間で気持ちのすれ違いが生まれることもあるかもしれない。けれど、大切なのは二人の絆。そこからどんな家族をつくりたいのかが出発点なんだな》

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 ファインは、講演会や対面カウンセリングのほか、月に2回、ピアカウンセラーによる無料電話相談も行っている。3月は13日と23日の午前11時~午後2時=03(5665)1605(当日のみ開設)。詳しい情報はホームページ参照。

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 ●メモ=不妊治療

 一般的には、夫婦が避妊せずに性生活を送っても2年以内に子どもができない状態を不妊症と定義する。不妊治療には、排卵日に性交渉をもつタイミング法▽採取した精子を直接子宮内に注入する人工授精▽シャーレ上で卵子に精子をかけて受精を助け、子宮に戻す体外受精▽顕微鏡で見ながら卵子の中に精子を注入する顕微授精─などがある。

=2013/03/07付 西日本新聞朝刊=

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