終末期医療の希望明記 事前指示書の有効性は? 法的効力ないが重要な判断材料

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久保井摂弁護士

 自分の人生の終末期にどんな医療行為を望むかを、事前に明確にしておく事前指示書(事前指定書などとも呼ばれる)。不本意な延命治療を避けたいなどの理由で用意する人もいるだろうが、有効性はどれだけあるのか。NPO法人「患者の権利オンブズマン」(福岡市)理事長の久保井摂弁護士に聞いた。

 -事前指示書に法的効力はあるのか。

 久保井 ない。事前指示書は「自分が意思表明できなくなったときに、どんな医療行為を受けたいか、あるいは、受けたくないか」を明確にしておくための文書だが、それを有効にしてくれる法律がないのだ。従って担当医に文面通りの医療行為をさせたり、させなかったりする強制力はない。

 -法整備は難しいのか。

 久保井 そうだ。というのは、例えば、かなりの高齢の人が回復の見込みがほとんどなさそうな状態であっても、その人に治療を提供することが「無駄な延命治療」と断定するのは難しいからだ。治療が回復につながる可能性を完全に排除することはできない。そうした現実を法律でルール化することは難しい。

 そもそも日本には「患者の権利」そのものを定めた法律さえない。そういう状況で「終末期における権利」だけを規定するのは適切でないとの指摘もある。

 -では事前指示書は何の役にも立たないのか。

 久保井 そんなことはない。本人が意思表明ができなくなっている場合にどんな医療行為をするのか、あるいは、しないのかを家族や医療機関が判断する重要な材料となる。

 -終末期に適切な医療行為を受けられるようにするために、アドバイスをお願いしたい。

 久保井 法律家として助言するのは難しい。ただ「積極的に治療をしてほしい場合」「治療をしてほしくない場合」など、いろいろなケースを想定して、終末期の医療への自分の考えを深めていくことは欠かせない。

 その上で、家族など周囲の人たちとの関係性をしっかり築き、自分がどのように死を迎えたいかを理解してもらって、自分の意思を代弁してくれる状況を作り上げておくことは有効だと考えられる。

    ◇   ◇

 「患者の権利オンブズマン」は、理事長だった池永満弁護士が昨年12月に死去したのを受け、2月10日に臨時会員総会を開き、副理事長だった久保井弁護士を新理事長に選任した。

=2013/03/15付 西日本新聞朝刊=

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