有期雇用 4月新ルール 改正労働契約法 5年超で「無期」転換可能だが 「雇い止め」増の懸念も

 契約社員やパートなど、労働者の4分の1に当たる1410万人が、あらかじめ期間を定める「有期雇用」で働いている。そうした不安定な働き方を減らそうと、改正労働契約法が4月に施行される。5年を超えて働いた場合、本人の希望で無期雇用に転換できるのが改正の柱だ。そこで心配されるのが、5年に達する前に「雇い止め」にされるのではないか、という点。既に施行を前にして、会社側が契約更新を5年未満に抑えようとする動きも出ている。現場を歩いた。

 突然の宣告に頭が真っ白になった。「4月1日以降は契約を更新しない」。北九州市の工場でパートとして働く女性(61)は2月初め、工場長から「雇い止め」を告げられた。

 1年契約を25年も更新してきた。勤務時間は正社員の8時間よりわずか30分少ないだけ。男性社員に交じり重労働をこなしてきた。作業のノウハウは誰にも負けない自信がある。四半世紀にわたり会社に貢献してきた自負もあった。

 にもかかわらず、事前に何の相談もなく、理由の説明もなかった。定年退職した夫と2人暮らし。月2万円ほどの年金では食べていけず、パート収入が家計を助けていた。「別の仕事を探すにも、この年じゃ…」

 女性は非正規労働者を支援する連合福岡ユニオン(福岡市)に相談。これまでに2度、会社と交渉の場を持ったが「雇い止めではない。契約が満了したので更新しないだけ」の一点張りで平行線をたどっている。

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 福岡市に本社がある運送会社で契約のトラック運転手として働いてきた30代の男性も途方に暮れる。契約期間が3年を超えれば正社員に昇格する労使慣行がある。今月末で丸3年。ところが3月初め、契約満了で更新しないと言い渡された。「正社員になれると信じて必死に働いたのに。裏切られた」。怒りは収まらない。

 非正規労働者の雇用安定や待遇改善を図るのを目的とした改正法。しかし、経営者側には、経営の自由度を保つためにも、コスト削減のためにも、無期への転換者をできるだけ少なくしたい本音が見え隠れする。福岡県経営者協会が昨秋実施した県内企業アンケート(137社)でも、55%が「更新に慎重にならざるえない」と回答している。

 改正法では施行後から契約年数が計算され、施行前の勤続年数はカウントの対象にならない。要するに、2018年4月まで有期労働者は無期への転換を申請できないのだ。

 改正法施行前に相次ぐ雇い止めについて、非正規労働者問題に詳しい福岡県弁護士会の星野圭弁護士は「将来的なトラブルの芽を摘むために、更新を繰り返しているベテランの非正規労働者を今のうちから整理しようとしているのではないか」と指摘する。

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 5年後を見越した経営者側の動きも出ている。福岡市にある大手金融業の福岡支店。事務に従事する契約社員7人は1年ごとに契約を更新してきた。長い人は通算10年に及ぶ。

 それが3月に入り、会社側から一斉に通告された。「4月以降から、契約は最長で4年11カ月までとします」。無期労働契約への転換が可能となる18年4月の直前に契約を打ち切る悪質な雇い止め通告といえる。

 働き方が多様化する今、非正規労働者の雇用環境が不安定で待遇が改善されないままでは、社会全体の停滞にもつながる。連合福岡ユニオンの寺山早苗書記長は「経営者は法の抜け道ばかり探さず、改正法の趣旨を理解して社会的責任を果たしてほしい」と話していた。

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 【ワードBOX】改正労働契約法

 改正により、有期雇用に関して三つのルールができる。(1)同じ企業で契約を更新し通算5年を超えた人は、企業に申し込むことで期間を定めない雇用(無期雇用)に転換できる。この5年は今年4月以降から数え始め、過去の分はカウントされない(2)契約が何度も更新されて長く働いている人は、正社員の解雇と同様、合理的な理由がなければ雇い止めにできない(3)有期雇用を理由とした不合理な労働条件を禁止する。賃金や福利厚生などの労働条件は、仕事内容や責任の程度などで、合理的な理由がなければ、正社員と差をつけてはならない。

=2013/03/23付 西日本新聞朝刊=

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