介護しながら働ける社会を 男性介護ネット関係者意見交換 企業や地域も支えて

男性介護ネット4周年に合わせて開かれたパネル討論。当事者らが活発に意見交換した 拡大

男性介護ネット4周年に合わせて開かれたパネル討論。当事者らが活発に意見交換した

 ■くらし天気図■ 
 親や妻など家族の介護をしている全国の男性が交流し、孤立を解消したり、問題解決に連携したりする「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(男性介護ネット)」の総会と4周年イベントが9、10の両日、事務局を置く京都市の立命館大学であった。介護をしながら働き続けられる社会づくりをテーマにした講演やパネル討論の様子を紹介する。

 パネル討論では、男性介護者や企業の人事担当者、NPO法人・高齢社会をよくする女性の会で理事長を務める樋口恵子さんらが意見交換した。

 この中で、定年退職の年に母親が倒れた神尾洋一さん(63)=兵庫県たつの市=は、介護のために実家に「単身赴任」した経験を語った。母親と向き合うことに「充実感と同時に、今後自分がどうなるかという焦燥感もあった」と神尾さん。同じような悩みを抱える介護者向けにコンサルタント業を始めたいという。

 父親を2年、母親を10年介護した山本巌さん(67)=京都市=は、病気の弟も含めて家族を支え続けた体験を発表した。公務員だったが、介護のために仕事に責任が持てなくなって退職したことや、介護休業を取りにくい実情を報告。「頑張りすぎたと思う。長期的に考えながら、勉強して早めに対応しておくべきだった」と振り返った。

 日本新薬(京都市)人事部専任課長の吉元恵美子さんは、家族が要介護になった社員への無利子融資制度や、共済会の介護費用補助制度を紹介した。

 会場からは、仕事をしながら祖父を介護する若者が「会社の制度が充実していないと介護が大変になったときに不安」と指摘。「1人でみていると無縁状態になる」「妻を定年退職まで辞めずに介護できたのは、妻が自宅で1人で過ごせたから。妻に関わる時間が多くなると問題が起きた」「父母に自分がした介護と同じことを自らの子どもに期待するのは無理。自分はどう最期をまっとうするか考える」などの意見も出た。

 樋口さんは「介護で転んでも誰かを道連れに立ち上がってほしい」とエールを送り、「要介護という弱さがある高齢者が多くいる社会に気付き、企業も地域社会も手を差し伸べれば、個々の脆弱(ぜいじゃく)性は、社会の強靱(きょうじん)性に転換できる。そんな見果てぬ夢を見たい」と語った。

 ●大介護時代へ総力戦 高齢社会をよくする女性の会理事長 樋口 恵子さん

 男性介護ネットの活動を支援するNPO法人・高齢社会をよくする女性の会の理事長、樋口恵子さんは「大介護時代を生きる」と題して基調講演した。要旨は次の通り。

 介護保険制度ができて13年。序章は終わり、今後20~30年が本番だ。介護の量が膨大に増え、女だ男だと言っていられなくなる。誰もが自分のことと支え合い、介護が豊かになるように、介護漬けでつぶされないように社会をつくるしかない。

 日本では急速に高齢化が進むだろう。一方、子どもの数は減っている。高齢化率が24%に迫る日本より早く高齢社会になったスウェーデンなど欧州は、20%にも達していない。子どもが生まれているからだ。男女平等に働き、長時間労働はなく、ワークライフバランスが取れている。働く人のための介護休業制度も発達している。税や医療保険は高率だが高福祉だ。

 日本は男性1人の稼ぎ手に全てを集中させ、妻が働いても控除を設けて税を払わないで済むようにした。社会保障費が少なく、経済成長する時代ならそれでいいが、考え直さないといけない。

 ただ現状では、女性より働いて税を納めている男性に辞めてほしくない。介護で男も女も仕事を辞めるが、それで人生を台無しにし、自らの老後の保障も失う。介護離職をしてはならない。職場は介護休業制度を整え、地域は福祉サービスを充実する総力戦が必要だ。

 少子化となり、独身率が高い日本は、本格的な無縁社会になる。血縁がなくても地域を中心に支え合うような社会をつくらなければならない。


=2013/03/28付 西日本新聞朝刊=

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