奨学金返せぬ若者増 雇用環境の悪化が影 5年まで猶予延長可能

奨学金の貸与契約書。数百万円の借金を抱えて返済に困る若者が増えている 拡大

奨学金の貸与契約書。数百万円の借金を抱えて返済に困る若者が増えている

 奨学金の返済に苦しむ若者が増えている。大学の授業料が高騰する一方、長引く不況で親の収入は減少。多額の奨学金に頼らなければ大学に通えず、500万円を超える借金を抱えるケースも珍しくない。就職しても収入は伸びず、就職難で働き口すら見つからない人もいる。不安を抱えながら社会に巣立とうとしている若者たちの実情を追った。

 氷河期の中でつかんだ第1志望。北九州市の私立大学を卒業した男性(21)は4月から、スポーツ用品メーカーに就職する。だが、心は晴れない。「本当に返していけるだろうか…」

 大学の4年間、日本学生支援機構から奨学金を借りた。総額240万円。3%の固定金利が付き、返済は300万円を超える。月1万6769円、180回払いのローンは15年続く。就職先の初任給は手取り約15万円。家賃や光熱費で10万円ほどかかり、返済額を差し引くと、月々の生活費は3万円ほどしか残らない。

 もちろん在学中から覚悟はしていた。奨学金のおかげで志望大学に通えたのだから。それでも実際に計算してみると不安ばかりが膨らんでくる。「旅行をしたわけでも車を買ったわけでもないのにローンを抱えるなんて、切ないですね」。表情は曇るばかりだ。

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 長引く不況が家計にのしかかり、奨学金を借りる学生が増えている。2011年度に支援機構の奨学金を受けたのは128万9600人。この10年間で倍近く増え、大学生に限れば3人に1人が利用する。貸付総額は約1兆585億円。そのうち有利子(第2種)は75・8%を占める。

 無利子の奨学金は親の所得や学業成績に一定の基準があり、枠に限りがある。毎年約3万人が、基準を満たしながらも有利子を利用せざるを得ない。この利子で膨らんだ借金が新社会人の重荷になっている。

 正規採用された人でも不安を感じている。ましてこの就職難。働き口がなく、あっても低収入の非正規職場だったりで、返済できない若者も急増している。

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 福岡市内の大学を卒業した男性(21)も、返す見通しが立っていない。総額560万円。就職活動では数十社に履歴書を送ったがことごとく不採用になり、アルバイトをしながら就職浪人をする道を選んだ。

 在学中は親からの仕送りはなく、食費込みの寮費4万5千円を含む生活費は、月8万円の有利子奨学金から捻出してきた。

 さらに大学4年の春、父親から「奨学金を増額してくれないか」と電話があった。専門学校に通う弟と高校3年だった妹の教育費がかさむというのだ。申し訳なさそうな父の声に即決する。月12万円に増額。この1年間、全額を弟たちに送金してきた。

 4月から月約2万3千円で20年の分割払いが始まる。「借りた金は返すのが筋ですから」。その声は悲壮感を帯びていた。

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 支援機構によると、11年度末時点の滞納者は約16万9千人。失業や病気による猶予は約10万8千人で、5年前から倍増している。機構から督促を裁判所に訴えた件数も1万を超えた。

 日本弁護士連合会が2月に実施した全国一斉奨学金返済問題ホットラインには453件の相談が寄せられた。「生活保護を受けていて返済できない」「自殺すれば解決するのか」…。深刻な実態が浮かび上がる。

 背景について、福岡県弁護士会のホットラインを担当した星野圭弁護士は(1)返済不要の給付奨学金が主流の欧米に比べ、国の支援が貧弱(2)奨学金が生活費に回っている(3)雇用環境の悪化-の三つの問題が複雑に絡み合っていると指摘する。

 返済できない場合は、病気や生活保護といった事情が考慮されれば、5年を限度に猶予期間の延長が可能だ。自己破産や、返済負担の圧縮と返済計画を立てる個人再生など法的手段を取ることもできる。星野弁護士は「返済できないのは本人だけの責任ではない。迷わず助けを求めてほしい」と呼び掛けている。

=2013/03/30付 西日本新聞朝刊=

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