若者の生活保護脱却には 社会的就労の場必要 NPOが試み報告 職業訓練経て職場体験 企業の協力課題

社会的就労の創出に向けて意見を出し合ったシンポジウム 拡大

社会的就労の創出に向けて意見を出し合ったシンポジウム

 生活保護を受ける若い世代が増えている。中には、非正規で短期労働の経験しかない、そもそも働いたことがない人も少なくない。その場合、単に就職をあっせんするだけで支援になるのか-。こうした課題ついて考えるシンポジウムが3月末、北九州市であった。そこで鍵とされたのが「社会的就労(中間的就労)」。職業訓練や職場体験を施すことで自立へと向かわせる取り組みだ。その中身について、シンポを通して考えてみた。

 シンポは、NPO法人・北九州ホームレス支援機構(奥田知志理事長)が主催。社会的就労の在り方を探ろうと、2011年度から2年間、厚生労働省の補助事業として試みた「若年者に対する伴走型就労支援」の報告会として開いた。

 まず、支援機構が12年度分の事業内容を報告した。対象は、北九州市の保護課を通じて募った生活保護受給者や困窮者の男女18人(17~48歳)。奥田さんによると「経済的困窮だけでなく、家族や地域から孤立する“関係的困窮”も加わった人たち」だという。

 事業を担当した機構職員の竹内美佳さんもシンポの中で「公共交通機関を使えない、人と目を合わせられないなど生活自立ができていない人もいた」と報告。親の世代から続く貧困の中で十分な教育を受けていない面もうかがえたという。

 そこで支援機構は「彼らと向き合い、共に歩む伴走型の支援」(奥田さん)を心掛け、そのための仕組みもつくった。

 支援機構の職員3人が支援員となり、一対一で信頼関係を築きながら支援計画を作成するなどサポート(個別型伴走支援)。市のケースワーカーや企業の研修担当、ハローワーク職員など6者がチームを組み、各研修生の支援方法について意見交換する場も設けた(総合的伴走型支援)。

 こうした態勢の下、研修生たちは、あいさつの仕方から学ぶビジネススクールや職業訓練を受け、事業に協力する地元企業で職場体験するインターンシップ型研修を積んだ。その結果、途中で4人が辞退したものの、3人がアルバイトで一般就労を実現。引き続き就労を目指す人やボランティアによる社会参加を目標とする人もいるという。

 職場体験では研修生に4千円の日当が出た。月17日働くと7万円弱の収入となり、生活保護費とほぼ同額になる。「保護費をただ受け取るより、働いて感謝されることで『役に立っている』という自己有用感が得られる」と奥田さん。そうした意識も自立への意欲につながっていった。

 シンポの後半ではパネルディスカッションがあり、職場を提供した地元の葬儀会社やドラッグストア、生協の関係者ら6人が登壇。「本格的に働きたいのか、まずは訓練なのか。どれくらいの収入を望むのか。若者一人一人を丁寧に見ないといけない。世の中には多様な企業がある。ニーズに応じた仕事は用意できるはずだ」などの意見が出た。今後、協力企業を増やすことも課題になる。

 コーディネーターを務めた奥田さんは「企業への『一般就労』ができなければ、生活保護を受けるしかないのが今の現実。一般就労と生活保護の間に、今回の事業のような職業訓練や社会参加に重点を置いた『社会的就労』という階段が必要だ」と強調した。

 ●働ける世代含む世帯の受給増加

 厚生労働省によると、昨年12月時点で生活保護を受けているのは、全国で157万823世帯と過去最多だった。このうち働ける世代を含む「その他の世帯」も28万9197で過去最多を記録し、受給世帯全体に占める割合は18・4%だった。リーマン・ショックが起きた2008年度は12万1570世帯(同10・6%)で、その後の景気低迷で職を失う人や就職できない人が増えていることが一因とみられる。

 また、中軽度の障害や傷病があったり、人間関係が苦手だったりして「働きたくても働けない」ケースもある。

=2013/04/04付 西日本新聞朝刊=

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