【人の縁の物語】<13>漫画自分史「団塊」つながれ 福岡・久留米の「新現役の会」 プロに依頼も計画

 戦後の1947~49年に生まれた「団塊の世代」が次々と定年退職を迎えている。人生に一区切りがついた今、次世代に何か伝えられないか-。そこで発案されたのが「漫画自分史」だ。団塊の世代による地域貢献に取り組む任意団体「新現役の会」本部代表の古賀直樹さん(64)=福岡県久留米市=が仲間たちと準備を進め、絵をプロの漫画家に描いてもらう計画もあるという。子ども時代、最大の娯楽として夢中になった漫画に、もう一度、夢を託す。

 構想は今年初めごろに持ち上がった。古賀さんの知人が『あしたのジョー』で知られる漫画家、ちばてつやさんと会ったのがきっかけだった。ちばさんは、雑誌の低迷などで若手漫画家の発表の場が減っている現状を嘆いていたという。

 「私たちの世代は漫画にお世話になった。困っているのなら恩返しをしなければ」。シニア世代には自分史ブームも起きている。そこで漫画自分史講座を開き、プロに絵を描いてもらったり、習ったりすれば、仕事が増えると考えたのだった。

 ちばさんは社団法人・日本漫画家協会の会長でもある。講師派遣で協力も得られそうだ。構想は実現へと動きだした。

 団塊の世代には漫画に特別な思いがある。子ども時代の59年に『少年マガジン』と『少年サンデー』が相次いで創刊。20歳前後のころには『あしたのジョー』や『巨人の星』の連載が始まり、大人になっても漫画に親しみ続けてきた。

 テレビはまだ広く普及しておらず、テレビゲームはもちろんない。古賀さんも漫画雑誌を買い、貸本店で借りて夢を育んだ。大好きだったのは『鉄腕アトム』。その影響で大学では応用化学を学び、関連企業に就職した。夢や思いを伝えられる「漫画の力」を、どの世代よりも信じている。

 一方で「総論賛成、各論反対」に象徴されるように、こだわりの強い人が少なくない。そんな同世代の大量退職を見込んで、古賀さんは2005年に「新現役の会」を設立したが、定年後に地域に戻って孤立している人もいるという。

 構想には「漫画だったら共通の話題の土台になる。若い世代や団塊同士の交流が広がればうれしい」との狙いもある。

 現在、福岡県内を会場に、夏の開講を目指して「新現役の会」と、知人が設立した一般社団法人「国際マンガ協会」で詳細を最終調整中だ。

 漫画自分史のスタイルとしては、04年出版の『私の八月十五日 昭和二十年の絵手紙』をヒントにする。111人の漫画家や作家が終戦した日の思い出を、1枚の漫画と800字前後の文章で表現した本で、ちばさんも名を連ねている。

 「子どものころの遊びや地域の祭りの様子、食卓に並んだ料理…。仕事をする中で得た教訓でもいい。孫や次の世代に伝えたいことを表現してほしい」と古賀さん。漫画自分史の展覧会、作品を集めた本の出版…。夢はまだまだ膨らんでいる。

=2013/04/09付 西日本新聞朝刊=

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