【人の縁の物語】<14>命、古里歌に刻む 福岡県久留米市の野田かつひこさん 「人々の生きた証し」

 ギター一本を携え、シンガー・ソングライターの野田かつひこさん(47)は、福岡県久留米市を拠点に各地を巡り、ふるさとと命の歌を作り続けている。大ヒット曲にならなくてもいい。その土地で懸命に生きる人たちの思いを形に残したい。出会った人たちの物語を歌で紡いでいる。

 忘れない ともに過ごした優しい時間は いつかまた帰ってくるから アロハ アウ イヤーオエ アロハ アウ イヤーオエ 福島を愛してるから

 爽快なハワイ風のリズムが特徴の新曲は、東日本大震災で被災した福島県いわき市の子ども50人の思いから生まれた。2011年8月、津波で被害を受けた地域を回り、コンサートを開いた。昨夏、そこで出会った子たちから作文が届いた。

 「家がなくなり、大好きだった友達と離ればなれになった」「放射線が心配。きれいで安全な海が戻ってきてほしい」「新しいふるさとを作っていきたい」‐。幼い字で書かれた率直な言葉が胸を打った。

 メロディーには、炭鉱低迷期にフラダンスで街が活気を取り戻したように復興してほしいとの願いを込めた。この夏に発売するCDに収録して現地へ届けるつもりだ。

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 ギターは中学時代に始めた。体が弱く人前で話すのも苦手だったのに、文化祭で注目を浴び彼女もできた。高校卒業後は働きながら音楽を続け、1996年に吉本興業福岡事務所の音楽部門から九州初のミュージシャンとしてデビューした。

 東京に何度も足を運び、売れる曲を作ろうと試行錯誤した時期もある。だが「何のために歌うのか」と自問した時に「目の前の人を喜ばせたいんだ」と気付いた。

 「地味でいい。地域の歴史や人々のドラマを歌で刻んでいこう」

 三池炭鉱全盛期に鹿児島県の与論島から集団移住して苦労した人々の思い、空襲で焼け野原となった久留米が復興する様子、閉校する離島の中学生の気持ち‐。現地に足を運び、関係者から話を聞いて曲を作ってきた。そこに生きる人々の息づかいを伝えたいからだ。

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 2007年、大きな転機が訪れた。30年以上、重症筋無力症で入院生活を送る吉河日出子さん(74)と出会う。病に屈せず明るく生きる姿にハッとさせられた。吉河さんの作った詩に曲をつけたのを機に、命をテーマにした歌づくりを始めた。

 娘を生後3日で亡くした両親や小児脳腫瘍の家族会との出会いから生まれた曲もあれば、看護師への応援歌も手掛けた。101歳のおばあちゃんへ孫がつづった思いや、人や命のつながりをテーマに小学生が作った詩を曲にしたこともある。

 「光が当たらなくても懸命に生きる人がたくさんいる。そんな人たちの生きた証しを残したい」。毎夏開く「さまざまな命の物語」コンサートは今年、7回目を迎える。

 ◇命のコンサートは7月に開催。8日=熊本市▽10日=佐賀県みやき町▽12日=大分市▽15日=福岡県志免町▽20日=鹿児島県姶良市。NODA倶楽部=0942(64)5791。


=2013/04/16付 西日本新聞朝刊=

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