不登校への対応は ~支援者全国実践交流会から 長所見つめ自尊感情を 悩み共感 自己回復に力

 文部科学省の全国調査によると、不登校の小中学生は15年連続で10万人を超え、高校生を加えると17万3千人(2011年度)に達する。ひきこもりの約6割が不登校を経験しているとされる。不登校の児童生徒への対応のポイントは何か。宮崎市で開かれた「社会的ひきこもり支援者全国実践交流会」の報告から拾った。

 熊本県天草市の離島・牧島にある通信制の勇志国際高校には、全国各地の1200人が在籍。その約7割を不登校経験者が占める。「スクーリング」と呼ばれる4泊5日の面接指導(対面授業)が必修になっており、保護者同伴から始まる生徒も少なくない。

 《桜庭輝典教頭の話 「どんな自分になりたい?」と生徒に尋ねると「今の自分と全部反対の自分になりたい」といった返答が目立つ。自己嫌悪、コンプレックスの塊だ。今の自分について、生徒たちは「表情が暗い」「周りとけんかばかり」「何をやっても中途半端」などと語る。では、その反対は何だろう? そう問い掛けると「なりたい自分」の姿が見えてくる。短所や欠点ではなく、持ち味や長所に目を向けることで、喜びの連鎖をつくっていくことができる》

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 大阪府貝塚市の通信制・秋桜(しゅうおう)高校の教諭は、女子生徒「ハル」の事例を紹介した。ハルは小学校から不登校になり、中学校には一日も通えなかった。緊張すると過呼吸になり、リストカットの自傷行為も繰り返した。しかし、この高校に在籍することで、不登校から徐々に脱した。

 ここには校則がない。教師手づくりの楽しい学級通信、レクリエーションを兼ねた体育の授業などで、生徒とのコミュニケーションを深めているという。

 ハルは作文の中で、教師たちの「大丈夫?」「よう来たね」「頑張ってるね」などの言葉が「うれしかった」とつづっている。高校入学時には平仮名しか書けなかったが、猛勉強で遅れを取り戻し、この春からは美術系の大学に進学した。

 《NPO法人・おおさか教育相談研究所の村上公平相談員の話 不登校の子どもたちを「不適応」と捉えるのではなく、「新たな自分づくりの途上」と、受け止めてあげてほしい。母親、父親、友達、社会と段階的に関係を結び直すことで、自己回復力が芽生える。(1)無理をさせない(2)自由にさせてあげる(3)見守る(変わるまで待つ)-などの姿勢が大切だ。他人と比較したり、「今のままでは、ろくな大人にならない」などの言葉は、生徒の不安を増幅する。「しんどかったら、無理しなくていい。元気になってからやろう」「必ず元気になる。心配しなくていい」といった声掛けをしている》

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 不登校の児童生徒や親たちの相談に、教師や支援者はどう対応すべきか。セミナーでは「児童生徒が自己肯定感(自尊感情)を高める相談」が求められる、との指摘があった。

 《不登校の生徒たちのカウンセリングに当たる高垣忠一郎・立命館大学教授の話 「自分が自分であって大丈夫」「ダメなあんたでもエエねんで」という気持ちを、生徒自身が持てるようになることが大切だ。自分のダメな部分もドンマイ、ヨシヨシと許せるようになることで、自分という存在そのものを肯定していくことができる。自分と共に生きられない人間が、他人と共に生きられるわけがない。

 相談では、説得や助言よりも、まず耳を傾けて聴くこと(傾聴)が求められる。生徒や親は、悩みの「答え」を求めているが、生徒が悩みながら、自ら問題解決の方法を見つけ出していけるよう、援助することが大切だ。生徒の話を聴くだけではなく、その気持ちをどれだけ受け止めてあげているだろうか。共感があって初めて、生徒は自分自身の心に耳を傾け始める》

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 【ワードBOX】不登校とひきこもり

 児童生徒が病気や経済的理由以外で、年間30日以上欠席した状態が「不登校」。小学6年~中学1年に急増する傾向がある。自宅に半年以上ひきこもり、就学も就労もせず、家族以外との人間関係を遮断している状態が「ひきこもり」。20~30代に多く、全国推計で約70万人(内閣府調査)。うつ病などの精神疾患が絡まないケースを「社会的ひきこもり」と呼び、いじめや不登校が深刻化する1980年代後半から目立ち始めた。

=2013/04/23付 西日本新聞朝刊=

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