福岡・子どもシェルター開設1年 少女10人保護 入居は原則2カ月 退所後の支援が課題

 親からの虐待、複雑な家庭環境…。こうした事情で居場所を失った10代後半の少女を保護する子どもシェルター(緊急避難所)「ここ」が福岡県内に開設され、1年2カ月が経過した。これまでに受け入れたのは延べ10人で、シェルターを“卒業”して1人暮らしに結びついたケースもある。だが、多くは就労が難しいなど退去後の生活に不安を抱えており、継続的な支援態勢の整備が求められている。

 暴力に耐えられなくて家を飛び出した。福岡県内の女性(18)は、小学生のころから日常的に母親と再婚相手の養父にたたかれ、暴言を吐かれてきた。シェルターの存在を知り、昨年春に身を寄せた。

 木造2階建ての民家を借りたシェルターでは個室が提供され、交代で常駐する女性スタッフが食事を作ってくれる。昼間はテレビや漫画を見たり、スタッフに手芸やパソコンの手ほどきを受けたり。お風呂で温まり、きれいな布団で横になれるのがありがたかった。

 時が静かに、ゆっくり流れる。傷ついた羽を止まり木で休めたような2カ月間。「少しは自信が持てるようになりました」。彼女は昨年夏にアパートを借り、仕事を始めた。

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 「ここ」をはじめとする子どもシェルターは、公的制度の不備を民間の力でカバーする。虐待で児童相談所に保護された子は一時保護所に入るが、18歳未満に限られ、大半は恒常的に満員状態。高校を中退すれば児童養護施設の退所を余儀なくされる。

 そもそも16、17歳といった年長の子は一時保護所でも児童養護施設でも、落ち着ける居場所をなかなか見つけられない。18歳を過ぎると児童福祉法の対象外となり、命からがら家を飛び出しても、公的に保護される仕組みが存在しない。

 こうした10代後半の子を保護しようと「子どもシェルター」を開設する活動が広がる。現在、全国に7カ所ある。九州には「ここ」だけで、昨年2月、弁護士や福祉関係者らでつくるNPO法人「そだちの樹」(橋山吉統理事長、福岡市)が「安心できる居場所を提供したい」と開設した。

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 運営を続ける中で課題もある。シェルターは、あくまでも「一時的に」かくまう施設。個室は三つしかなく、次に必要とする子のために、入居期間は原則2カ月に限っている。

 運営費も課題の一つ。交代で常駐するスタッフ4人は有償で働いてもらっている。加えて、家賃、食費、衣服費…。行政の助成はあるが、十分でないため有志の寄付で賄っている。このため、男子まで受け入れる余裕がない。「ニーズはあっても簡単に手を広げることはできない」(そだちの樹)のが実情だ。

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 少女たちは退去後、18歳以降でも受け入れる自立援助ホームなどの福祉機関に入所したり、就職したりして自立を目指していく。その際、福岡県弁護士会の有志が「子ども担当弁護士」となり、一緒に仕事や住まいを探すなどのサポートをしている。かくまうだけでなく、退去後もしっかりフォローしていく。

 それでも、1人暮らしをするようになって突然連絡が取れなくなったり、安定した職に就けず生活保護に頼らざる得なかったり…。親の庇護(ひご)がないどころか、虐待を受けていた少女にとって、いきなり社会に出て独り立ちを求められるのは酷でもあり、道は険しい。

 「そだちの樹」事務局長の小坂昌司弁護士(福岡市)は「自立援助ホームの数を増やすだけでなく、雇用に協力してくれる経営者や精神面をケアするカウンセラーなど、重層的なネットワークの構築が不可欠」と今後の課題を挙げていた。

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 ●子どもシェルター「ここ」 電話=050(3045)2769

 子どもシェルター「ここ」への緊急避難を希望する場合は、電話=050(3045)2769=に連絡してください。応対時間は午前9時~午後8時。それ以外の時間帯は、留守番電話にメッセージをお願いします。「そだちの樹」の関係者が折り返し連絡します。ファクス=050(3062)3767=でも受け付けます。


=2013/04/25付 西日本新聞朝刊=

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