不登校の背景は 福岡県立大大学院 四戸智昭准教授に聞く 「親子の共依存」一因 親が変わり関係結び直しを

「子どもたちの不登校やひきこもりの対応には、まず親の意識変革が求められる」と話す四戸智昭准教授 拡大

「子どもたちの不登校やひきこもりの対応には、まず親の意識変革が求められる」と話す四戸智昭准教授

 不登校やひきこもりについて研究、相談対応にあたる福岡県立大学大学院看護学研究科の四戸(しのへ)智昭准教授(39)は、その背景の多くに、親子が過度に依存し合う「親子の共依存」があると指摘する。四戸准教授自身にも不登校経験があり、「まず親が自分自身の人生を見つめ直すことから始めよう」と呼びかける。

 四戸准教授によると、不登校やひきこもりの背景に、いじめなど学校側に原因があるケースもあるが、家族の人間関係に課題があるケースが少なくない。親と子が、互いに生きるための安心感を得るため、固着した関係を求め合う「共依存」の傾向が強いという。

 「例えば、母親が不登校の子どもに『おもちゃを買ってあげるから、学校に行きなさい』と言って、登校させたりする。すると子どもは、おもちゃが欲しいので、しばらくするとまた学校を休む。おもちゃを通じて、母親は子どもを支配しているようで、実は子どもからも支配されている。コインの裏表のような共依存関係だ。わが子の不登校やひきこもりは、母親にとっては恐怖でもある。その恐怖を通じて、子どもは親をコントロールしている」

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 不登校やひきこもりを打開するためには、こうした親子関係を組み替えていく必要がある。しかし、多くの母親が一人で奮闘、孤立している。四戸准教授たちは、不登校やひきこもりの児童生徒のいる母親たちを集めたグループミーティングを毎月1回続ける。

 「多くの母親は最初、他の母親の体験を黙って聞くだけだ。だが、3カ月ほどすると、他の母親が語る体験談に心から共感して泣く。半年ほどたつと、自分の体験を語り始める。誰にも打ち明けられなかった思いを、同じ悩みを抱えるグループの中で語れるようになるのが、開かれた関係を築くための一歩だ」

 「自分のためだけにお金と時間があれば、あなたはどうしますか? 母親たちにはよくそう問い掛ける。あるお母さんの答えは『美容院に行く』。子どものことで頭がいっぱいだったのが、鏡に自分を映すように、自分自身の欲求、自分という存在に目を向け始めた証しだ」

 「他者との出会いによって、自分には子ども以外の世界があることに気付くことが大切だ。興味関心、選択肢も広がり、親と子の境界、別人格である子どもという存在も受容できるようになる。母が変わることで、父子や周囲の人も変わっていくスパイラル(連鎖)にもつながっていく」

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 四戸准教授自身も不登校の経験がある。小学2年生のころだった。いじめに遭ったわけでも、勉強についていけなかったわけでもない。朝になると、動悸(どうき)が激しくなる。母親に連れられて学校に着いても、教室に入れない。不登校は2カ月ほど続いた。

 「あのころ父は帰宅すると、いろんな不満を母にぶつけ、母に手を上げることも少なくなかった。父が母を一方的に叱る声を、私は夜中、布団の中で聞いていた。母が妹を身ごもったころでもあった。私が学校に行っている間に、母が家からいなくなるのではないか…。そんな不安や恐怖が子どもなりにあったのだと、今なら分かる」

 四戸准教授の母親は、父子が一緒に過ごす時間を増やした。父親の笑顔が増えると、学校に通えるようになったという。

 「不登校やひきこもりの相談に訪れる父親は、母親の1割程度。父親と母親の関与のバランス、父親の仕事依存なども見直し、家族関係を結び直していくことが大切。父親がいない場合は、親族や地域の人々の支援が求められる」

 盛岡市出身。専門は嗜癖(しへき)行動学。暴力、ギャンブル、飲酒、仕事、買い物などへの嗜癖(依存)も、不登校やひきこもりも根っこは同じで、家族の人間関係や、置かれている社会状況に要因がある、との視点に立つ。

 「すべての現実と症状には意味がある。不登校やひきこもりは、子どもたちからのSOS信号と見るべきだ。子どもたちの人生うんぬんの前に、大人たちが人生をどう生き、終えるのかを考えたい」

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 ▼福岡県立大学の不登校・ひきこもりサポートセンター 年間相談件数はここ数年、延べ2300件前後で推移していたが、昨年度は2800件に増えた。親たちのグループミーティングは毎月第4土曜日。0947(42)1346。

=2013/04/30付 西日本新聞朝刊=

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