「65歳雇用」ポイントは? 年金受給まで 段階的に 労働条件 継続義務なく

 希望者全員を65歳まで雇うよう企業に義務づけた改正高年齢者雇用安定法(高齢法)が4月1日に施行されました。高齢になっても仕事を続けたい人の働き方は、どう変わるのでしょうか。Q&Aでまとめてみました。

 ‐改正のポイントは。

 「64歳までの雇用は法改正前から義務づけられていました。ただし、懲戒処分の有無や出勤率など労使で合意した基準に照らして、企業側が継続雇用する人を『選別』できるようになっていたのです。改正では、この例外措置を廃止しました」

 ‐どうして改正したのですか。

 「会社員などが加入する厚生年金で、男性の支給開始年齢がこの4月から3年ごとに1歳引き上げられ、2025年度に65歳になります。60歳の定年後に継続雇用されなかった人が無年金・無収入になるのを防ぐのが大きな目的です」

 ‐希望をすれば全員が65歳まで継続雇用されるなんて朗報ですね。

 「そう単純な話ではないんです。無年金状態の解消が目的なので、年金を受給できるようになれば、従来通りの『選別基準』が適用されるようになります。例えば14年度に61歳になる人は、61歳になるまでは選別基準は適用されません。ただし、61歳後も継続して雇用されるかは、労使の基準を満たすかどうかが問われることになるんです。経過措置と呼ばれるもので、法改正を審議した際、負担増に反発した企業側が国に強く求めて実現しました」

 ‐年金受給の有無にかかわらず、希望者全員を65歳まで再雇用すればすっきりする気がしますが。

 「経団連の試算では、選別基準を廃止しただけでも全国の企業が支払う賃金総額が2・0%増、1兆9千億円増える見通しです。高齢者の継続雇用は企業にとって大きなコスト増になるため、少しでも負担を減らしたいという企業側の本音が透けて見えます。年金の制度設計の見通しの甘さを国が企業に押しつけている側面も否めません」

 ‐希望通り継続雇用された場合、賃金や働く時間などの労働条件はどうなるのですか。

 「定年延長ではなく、再雇用なので、定年前の職域や賃金などの待遇はいったん終了し、白紙の状態で雇用主と話し合いを行うことになります。ここで注意してほしいのは、賃金や労働時間の条件で合意できずに継続雇用にならなくても、企業側に高齢法違反を問えないということです」

 ‐なぜですか。

 「高齢法では、高齢者の継続雇用を確保する制度を設けるよう企業側に求めています。ところが、定年退職者の希望に合致した労働条件で継続雇用することを義務付けてはいません。納得できない場合、最低賃金法をクリアしているかなど民事訴訟で争うことになります」

 ‐希望者全員が継続雇用されるのが原則とはいえ、ハードルが高いということが分かりました。

 「今後10年間で日本の労働人口は433万人も減少します。高齢者が意欲と能力に応じて働ける環境を整備することが求められています。そうはいっても、これ以上一律で、高齢者雇用について法的に決めるのは、企業の体力や若者の雇用への影響を考えれば難しいでしょう。これから定年を迎える人は、継続して働いてほしいと経営者に思わせるよう、スキルアップを重ねる努力が必要なのかもしれません」


=2013/05/02付 西日本新聞朝刊=

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