【おなかの命は… 不育症】<4>助成拡大へ力を集めて

妊娠初期の超音波検査で見える小さな赤ちゃん。子宮や胎盤の血流が悪いと胎児に栄養が届かず、流産のリスクが高まるため、薬で治療する 拡大

妊娠初期の超音波検査で見える小さな赤ちゃん。子宮や胎盤の血流が悪いと胎児に栄養が届かず、流産のリスクが高まるため、薬で治療する

 ■こんにちは!あかちゃん 第5部■
 
 《最初の検査に数万円、注射1本7千円、毎週の検診ごとに数千円。不育症の治療って、こんなに費用がかかるとは思わなかった。共働きじゃなかったら、通えなかったかも…》

 福岡県小郡市の美紀さん(37)=仮名=は2回目の流産後に検査を受け、ホルモンの分泌異常だと分かった。治療を希望し、数種類のホルモン剤を服用、排卵前には注射を打つことになった。血栓予防のアスピリンも飲んだ。3回目の妊娠には至ったものの、出産予定の病院でも検診を受ける必要があり、費用は倍かかった。

 こうした治療を経て2児の母親になった美紀さん。「自分に原因があったから、夫に対して『お金を使わせてもらっている』という申し訳なさを感じていました」と当時を振り返る。

 連載2回目に登場した典子さん(36)=仮名=も、この3年間で治療費や通院の交通費が250万円ほどかかっている。典子さんに染色体の転座があり、着床前診断を受けた上で体外受精に取り組んでいるが、結果はまだ得られていない。

 「通帳の残高は減る一方。年齢より先にお金に限界がくるかもしれない」と典子さん。最近、老後の蓄えも心配になってきた。

 不育症の治療や検査は保険適用外も多い。血栓予防のヘパリン自己注射は昨年から適用対象となったが、抗リン脂質抗体症候群など一部の患者に限られるのが現状だ。

 当事者グループ「不育症そだってねっと」(神奈川県)が会員117人に聞き取り調査をしたところ、出産までの費用は平均約106万円で、ヘパリン注射をした人で約124万円に上った。代表の工藤智子さん(37)は「一般の妊婦さんは約60万円。お金がないから治療を諦めたという人もいます」と話す。

 不育症の場合、不妊治療のような国の助成制度はなく、一部の自治体が独自に助成しているだけだ。そこで工藤さんは、ヘパリン治療を受けて次男を出産した2010年から、自治体や議員に対して、公的支援や相談窓口の設置を求める活動を行っている。

 「自分が出産して終わりではなく、同じ悩みを抱えている人たちのために何かしたかったから」。そんな思いで活動する工藤さんの呼びかけで、会員は関東を中心に約180人にまで増えた。助成を行う自治体も全国で60ほどに拡大している。

 ただ、九州での動きは鈍い。西日本新聞が各県などに問い合わせたところ、熊本県南阿蘇村、大分県竹田市など9自治体にとどまっているのが実情だ。

 待っているだけでは何も変わらない-。福岡県行橋市に暮らす恵美さん(32)=仮名=は4月上旬、市に不育症治療への助成を求める要望を出した。2度の流産を経て、不育症の治療を始めようと決意した直後のことだ。

 インターネットで専門医を調べてもなかなか見つからない。結局、検査を受けるために福岡市内の病院まで2時間かけて通うことにした。結果次第では、専門外来のある県外の病院を訪ねることも検討している。

 経済的な負担、仕事との両立…。いろいろ考えると不安が膨らんでくる。そんな時、同じ県内の上毛町が本年度から、県の自治体で初めて不育症への助成を始めたことを知った。「声を上げる人がいれば、行政も動いてくれるかもしれない」。すぐに行動に移した。

 約1週間後、市から電話があった。「不育症というものを初めて知りました」と担当者。「現時点で実施予定はありません。今後検討します」という回答に落胆したものの、不育症のことを知ってもらえただけでも一歩進んだ気がした。

 《ブログにこのことを載せると「私も行動してみよう」とコメントが寄せられました。一人の声は小さくても集まれば力になる。不育症のことをみんなが知り、治療のチャンスがある社会になってほしい》

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 ●メモ=不育症の助成制度

 国は、不妊治療に対しては2004年度から助成事業を開始。所得が730万円未満の夫婦に5年間で10回まで、1回最大15万円を補助している。一方、不育症に助成金はなく、各自治体が少子化対策として独自に取り組んでいる。当事者グループ「不育症そだってねっと」の調査によると、助成額は5万~30万円。保険適用外の検査や治療を対象に助成する自治体が多い。九州で助成制度を設けているのは、福岡県上毛町▽大分県竹田市、豊後高田市、由布市▽熊本県小国町、南小国町、南阿蘇村▽鹿児島県薩摩川内市、長島町-の9自治体(西日本新聞調べ)。専門医が少ないため、通院にかかる交通費も患者の負担となっている。


=2013/05/31付 西日本新聞朝刊=

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