【おなかの命は… 不育症】<5完>治療で8割以上が出産

 ■こんにちは!あかちゃん 第5部■
 
 妊娠はするものの、流産や死産を繰り返す不育症。約20年前から研究を始め、岡山大学病院(岡山市)で専門外来を担当している医師の中塚幹也さんの話や厚生労働省研究班のデータを基に、検査や治療法について、あらためてQ&A方式でまとめてみました。

 Q 不育症という言葉はあまり聞いたことがなかったのですが。

 A 3回以上連続して流産する「習慣流産」は昔からよく知られています。不育症は、流産、死産、新生児死亡を2回以上繰り返した状態で、習慣流産より広い概念です。1人目は無事に生まれても、2人目、3人目で流産した場合は「続発性不育症」として検査をする必要があります。

 厚労省研究班の報告では、妊娠したことがある女性の4・2%に起こるとされ、決して珍しいものではありません。検査、治療を受け、最終的に8割以上の人が出産しています。

 Q 認知度は高くなってきているのでしょうか。

 A 2008年から3年間、厚労省の事業として、全国の不育症治療の拠点施設が集まって研究班をつくりました。それまでは検査や治療の指針がありませんでした。さまざまなデータが明らかになったため、11年に指針をまとめて全国の産婦人科に配布しました。

 ただ、まだ十分に浸透したとはいえず、2回以上の流産でも「運が悪かった」と医師から言われ、適切な検査や治療を受けられていない人もいるようです。

 Q 流産はどのくらいの頻度で起きますか。

 A 全妊娠の約15%に起こるとされ、35歳以上になると流産率は上昇します。妊娠反応が陽性となった後、子宮に赤ちゃんの袋が確認される前に流産してしまう「生化学的妊娠」は含みません。検査薬の感度が上がったことで確認されやすくなったのですが、よく起こるケースで神経質になる必要はありません。何度も繰り返す場合は医師に相談してみましょう。

 Q 不育症の検査にはどんなものがありますか。

 A 子宮卵管造影検査や超音波検査で子宮の形の異常を調べます。甲状腺機能や血栓のリスクとなる抗リン脂質抗体などは血液検査によって調べます。これらの1次スクリーニング検査はほとんど保険適用ですが、夫婦の染色体異常を調べる検査や病院が行う選択的検査の一部、研究段階の検査などは自費診療となります。

 Q どのような治療がありますか。

 A 子宮の形が悪い場合は手術を行います。ただ、形態異常の種類によっては手術の有効性が解明されていないケースもあるため、十分な検討が必要です。子宮や胎盤の血流が悪く、胎児に栄養が届きにくい体質の場合は、低容量アスピリンの服用やヘパリンの自己注射で血栓を予防します。

 Q 投薬による副作用や胎児への影響はないのでしょうか。

 A 海外の疫学調査では、妊娠中のアスピリンと子の先天異常の因果関係は認められていません。ヘパリンは胎盤を通過しないため赤ちゃんには移行しません。軽い肝機能異常や出血が止まりにくくなる副作用の可能性があるため、医師の診察を受けながら注射をする必要があります。

 Q 夫婦の染色体異常が原因の場合の治療は?

 A 染色体異常は治せませんが、出産できる可能性は十分にあります。流産を繰り返したくない場合は、着床前診断をした上で体外受精するという選択もあります。その際は事前にしっかりと遺伝カウンセリングを受けた上で臨みましょう。

 Q 検査をしても原因が分からない場合は?

 A 流産の8割は、胎児の偶発的な染色体異常が原因で起こるため、3回流産した場合も半数は偶発的ということになります。研究班の報告で、特に治療をしなくても次の妊娠では高い確率で出産に至ることが分かっています。

 一方で、カウンセリングを受けた方が成功率が高くなるというデータもあります。相談窓口や医療機関でゆっくり話す時間を取ってみましょう。流産した場合に胎児の染色体検査を行うことは、治療方針を決める上で役立ちますが、保険適用外となっています。

 Q 専門医や相談窓口を知りたい。

 A 厚労省のホームページには、全国の相談窓口のリストが掲載されています。厚労省研究班の不育症専用サイトもあり、そこには専門医や治療の情報などが詳しく載っています。

 不育症は専門医が少なく、検査も不十分なため、本来治療が必要である人が見逃されたり、過剰な医療が行われたりしているのが現実です。保険適用外の検査や治療があり、患者の経済的負担も小さくありません。早急に改善する必要があります。 =おわり


=2013/06/01付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ