日本の乳幼児教育 現状は 福岡市でシンポ 予算配分 義務教育より低く 欧米では就学前重視の国も

西南学院大であったシンポジウムでは、世界から見た日本の乳幼児教育や保育の現実が浮かんだ 拡大

西南学院大であったシンポジウムでは、世界から見た日本の乳幼児教育や保育の現実が浮かんだ

トーベ・スリンデさん

 日本の乳幼児教育・保育は、世界から見るとどんな位置にあるのか。西南学院大学(福岡市)で5月にあったシンポジウムでは、経済協力開発機構(0ECD)の乳幼児教育部会で議長を務めるトーベ・スリンデさん(ノルウェー)、日本保育学会会長を務める東大大学院の秋田喜代美教授らが講演。生涯学習の第1段階と位置づけ、義務教育並みに予算を配分する欧米各国に比べ、日本の取り組みは薄く、その学びも転換点に立っているようだ。

 世界の乳幼児教育には、「就学準備型」と「生活基盤育成型」の二つの潮流があるとされる。

 「就学準備型」は読み、書き、計算など、小学校の学習の準備となる基礎学習を重視する流れで、米国、英国、フランスなどでその傾向が強い。

 「生活基盤育成型」は、知識や技能の習得より、子どもの興味や関心を重視し、理解を深めたり、学びを広げたりしようとするスタンス。ノルウェーなどの北欧はこの流れにある。

 日本は公的には「生活基盤型」だが、一部の私立幼稚園などでは、学力強化、早期教育を掲げて「就学準備型」も見られる。国の指針にはあいまいな面もあり、混在しているのが現実だ。

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 スリンデさんはノルウェーで保育を担当する行政官で、幼稚園で指導に当たった経験もある。

 ノルウェーは1975年、幼稚園(乳幼児教育)と保育所(児童福祉)を統合する「幼保一元化」をいち早く実現したことで知られる。6歳から10年間が義務教育だが、1~5歳児が保育を受ける権利が法律で保障されている。

 2011年調査では、3~5歳の90%以上が保育を利用。保護者が負担する保育料の上限設定、低所得世帯の無償化で、利用率が高まっているという。

 スリンデさんは「遊びを通じた社会性の育成、言語の学び、移民が多いため多文化共生などの視点から、カリキュラムの研究を進めている」。利用率が高まる一方で、保育士らの人材確保、指導水準の向上が課題になっているという。

 秋田教授は、子どもの年齢ごとに投入される教育・保育予算比率を示すグラフを国別に紹介した。

 ノルウェー、英国などは、義務教育並みかそれ以上に、就学前の5歳までに予算が重点的に配分されていた。その半面、日本は義務教育に比べ、乳幼児教育・保育への予算配分が薄く、待機児童の問題などにもつながっているようだ。

 日本の保育士や幼稚園教諭1人当たりの担当児童数は、2歳までの乳児ではOECD平均並みだが、3~5歳の幼児では同平均を大きく上回る。それぞれの国事情もあるが、子どもにとって適正な保育環境は何か、議論が続いているという。

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 世界各国の乳幼児教育は、ドイツの教育家・フレーベルが19世紀、「幼稚園」を創設して以来、「遊び」を中心に指導が進められてきた。

 しかし、グローバル化、IT化が進む「知識基盤社会」とされる21世紀、子どもたちに求められる学力について、OECDは「単なる知識の有無ではなく、知識や情報を実生活の問題解決にどう活用できるか」などと新たに定義。こうした「学び」を、乳幼児教育の現場にどう位置づけるか、各国とも問われる形になっている。

 日本ではいじめや小1プロブレム(小学校の生活になじめず、教室で動き回ったり、騒いだりする)などをめぐり、人格形成の土台となる乳幼児教育や接続(幼稚園・保育所と小学校の連携)のあり方を問い直す動きもある。

 西南学院大学人間科学部の門田理世教授は「子どもたちの学びにつながる素地づくり、子ども同士の学び合いに向け、大人たちは何を、どう支え、関与すべきか。教育効果の点数化、単純比較は難しいが、各国の模索が続いている」と話している。

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【ワードBOX】フレーベル

 「幼児教育の父」と呼ばれるドイツの教育家。1840年、ブランケンブルクに「幼児の園」(キンダーガルテン)を創設した。幼児を花園の草花にたとえ、指導によってその芽は伸びる、として名付けられた。遊びと作業を中心とする幼児の自己活動を重視した。日本では1876(明治9)年、東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)の付属施設として初めて開設され、全国に広がった。

=2013/06/04付 西日本新聞朝刊=

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