発達障害児 進学に苦悩 私立中高一貫校 入学辞退迫られ 両親「多様性認めて」

福岡市発達教育センターでも発達障害の児童を対象にした自立活動教室が開かれている。トランポリンやボールプールなどを使い、5人程度で遊びながら学ぶ 拡大

福岡市発達教育センターでも発達障害の児童を対象にした自立活動教室が開かれている。トランポリンやボールプールなどを使い、5人程度で遊びながら学ぶ

 軽度の発達障害がある男子生徒がこの春、福岡市内にある私立の中高一貫校に合格した。ところが、学校側から「受け入れ態勢が整っていない」として、入学辞退を迫られる形になった。生徒は公立中学校に進学したが、ショックは隠せない。クラスに2~3人いるとされる発達障害の子どもたち。学びの支援が求められる中、進学への壁は厚く、親子の悩みは深い。

 両親によると、一人っ子の長男は幼稚園のころから、一人でブロック遊びなどをすることが多く、歌に合わせた遊戯などが苦手だった。小学校に入学してからも、音楽や体育の授業が受けられなかった。教師が授業に参加させようとすると、机に顔を突っ伏し、動かなくなる。

 ほかにも気掛かりな点があり、専門医で受診すると「高機能広汎性発達障害」との診断だった。「高機能」とは、知能指数(IQ)が標準の70以上で、学力面では問題がないものの、集団行動、対人関係などが難しかった。

 2年生になると、担任との関係がうまくいかず、同級生から冷やかしを受けることも重なり、不安定になった。「なぜ、これができないのか」。両親も声を荒らげてしまうこともあった。

 この小学校に特別支援学級ができたのは、生徒が3年生の時で、知的障害の児童を対象にしたものだった。生徒は通常学級で学び、担任の指導力に頼らざるを得なかった。

 6年生になり、近くの小学校にある、発達障害を対象にした「通級指導教室」に週1回通うようになると、落ち着きをやや取り戻した。しかし、運動会や発表会には参加できず、卒業証書は校長室で受け取った。

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 幼少時代から機械いじりが好きだった生徒の夢は「飛行機や新幹線の整備士」。高校受験の負担軽減、将来の就職のためにも、両親は生徒を中高一貫校に進学させたいと考えた。生徒は4年生から家庭教師の指導も受け、勉学に励み、中学受験を突破した。

 両親は入学金を振り込む前、学校側に事情を伝えたが、「大丈夫」との回答だった。ところが、入学説明会に親子3人で出席した際、これまでの経過を文書にして指導への配慮を求めたところ、学校側は態度を硬化させていったという。

 「特別支援に関する知識や情報を持ち合わせた職員が少ない」「新たな集団生活の中で、いつ不測の事態が起きないとも限らない」などが理由だった。入学金などは返還されたものの、親子は割り切れない。

 父親は「制服の採寸、学用品の購入も終え、息子はもう、卓球部に入りたいと、張り切っていましたから」。少子化に伴う学校間競争の激化、学力優先、私学の裁量も分からないではないが、両親には「あまりに酷な、教育を受ける権利の侵害」と映る。

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 発達障害への対応では、この生徒のケースのように通常学級に在籍しながら、対人関係を築くための技能を学ぶ訓練(ソーシャルスキルトレーニング)を重ねる「通級指導」が有効とされる。親子で通うことが原則で、家庭での指導にもつながっていく。

 福岡市では現在、公立小学校145校のうち10校(25教室)、中学校69校のうち3校(7教室)に通級指導教室が設けられている。人口比に照らせば設置率は全国でも高い方だが、対応は追いついていないのが実情だ。各学校も、指導の中心となる教諭「特別支援教育コーディネーター」を任命し、授業研究や研修を通じて指導法を模索しているが、取り組みには学校間で濃淡があるようだ。

 苦手な運動会が近づいていたこともあったのだろうが、この生徒は中学校に入学後、学校を休みがちになった。父親は「子を思う親の気持ちは誰も同じ。それぞれの違いを『障害』ではなく『多様性』と認め合う社会づくりの第一歩が学校であることを、忘れたくない」と話した。

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【ワードBOX】発達障害

 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)▽学習障害(LD)▽注意欠陥多動性障害(ADHD)-などの脳機能障害。2005年に施行された発達障害者支援法で認定範囲が拡大された。授業中に歩き回る、他人の気持ちを読み取ることが困難、特定の分野が極端に苦手だったりする。

 文部科学省が昨年12月に発表した調査では、公立小中学校の通常学級に6・5%(小学校7・7%、中学校4・0%)が在籍。6割の児童生徒は(1)席を教師の近くに配置(2)宿題を工夫する(3)個別指導-などの支援を受けていたが、残り4割は特別な支援を受けていない。

=2013/06/11付 西日本新聞朝刊=

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