【人の縁の物語】<21>シェアハウス 「同志」集まれ 猫好き、コミュニティーづくり 目的明確に

猫の後ろ姿が「Q」の字に見えることから名付けた「福岡Qハウス」のリビング 拡大

猫の後ろ姿が「Q」の字に見えることから名付けた「福岡Qハウス」のリビング

糸島シェアハウスでのお茶会。大人も子どもも、たくさん遊びに来る

 一つの住居を複数人で共有する「シェアハウス」。以前は経済的理由が多かったが、そのスタイルは変わりつつある。同じ趣味や目的を持った仲間たちと快適に暮らす‐。急増する「コンセプト型」のハウスを訪ねた。

 この春、福岡市中央区にオープンした「福岡Qハウス」。コンセプトは「猫と暮らせる」だ。3LDKのマンションに男女3人と黒と白のぶち、ロシアンブルーの2匹が暮らしている。

 企画したのは江頭聖子さん(32)。猫好きは多いのに飼育費や留守中の心配、賃貸物件の制限もあって、1人暮らしで飼うにはハードルが高い。「みんなでなら乗り越えられると思って」。シェアハウスのインターネットサイトで入居者を募るとすぐに反応があった。

 その一人、真一さん(32)の応募理由は「大好きな猫で失恋の傷を癒やすため」。ニャーとすり寄ってくる2匹にすっかりメロメロだ。初めて猫と暮らす竜さん(27)は「猫を見たいとそれぞれの友人が遊びに来るので、交友関係が一気に広がりました」と話す。

 「以前は仕事が多忙になると、猫もストレスで家を荒らしていた。今はみんなの愛情が伝わるのか、いい子になりました」と江頭さん。猫の保護、飼い主探しをしている団体と連携し、シェルターを兼ねた2軒目のシェアハウスを計画中だ。

 美しい棚田を望む福岡県糸島市二丈町の「糸島シェアハウス」。料理人、カメラマン、着付け師、農業を志す人…。「必要なものは自分たちでつくる」というコンセプトの下、築80年を超える古民家に、個性豊かな男女6人が暮らしている。

 家主の畠山千春さん(27)、志田浩一さん(28)は昨年、関東から移住してきた。きっかけは東日本大震災だった。スーパーで買い占めが起き、電力不足で計画停電。「いざというときはお金があっても役に立たない。生きていける技術と支え合って暮らすコミュニティーをつくろう」。5月からシェアハウス生活をスタートさせた。

 目指すのは「作り手の顔が思い浮かぶ暮らし」。空き家で荒れ放題だった建物は、友人たちが掃除を手伝ってくれたおかげで住めるようになった。食事は地元の農家から購入した野菜や魚で作る。庭のヨモギを摘んでお茶にし、おやつは近くの畑の夏ミカンだ。

 そんな暮らしぶりに引かれ、全国からいろんな人が集まってくる。取材に訪れた日にも、近所から総勢8人で遊びに来ていた。「なんか落ち着くのよね」。おしゃべりに花を咲かせ、気が付けば3時間。「今度は庭の手入れを手伝うよ」「梅をもぎに来るね」。再訪を約束して帰っていった。

 「ただの家じゃなくて、いろんな人とつながって化学反応が生まれる場所にしていきたい」と畠山さん。土間を改装したカフェづくり、耕作放棄地の再生、糸島でのビジネス創造…。やりたいことがたくさんある。理想のコミュニティーづくりは始まったばかりだ。


=2013/06/18付 西日本新聞朝刊=

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