生活保護 若い世代も 働きたいが病気、雇用悪化… 自立へ寄り添う支援を

路上生活をしている時に野宿をした公園のベンチに座るA子さん。今は結婚して夫(左)と共にアパート生活を送る 拡大

路上生活をしている時に野宿をした公園のベンチに座るA子さん。今は結婚して夫(左)と共にアパート生活を送る

 ■くらし天気図■ 
 生活保護の受給者が増え続ける中、20代や30代のいわゆる「働き盛り」も例外ではない。生活保護費が膨らみ、特に働ける世代には自立が求められるが、簡単にいかない事情を抱える人もいる。「働きたい」という意思のある2人を訪ね、どうすれば実現できるか、どんな支援が必要か、考えてみた。

 突然、過呼吸が襲った。北九州市のA子さん(21)は休職を余儀なくされた。「今の私は生活保護がないと生きていけない」。5月初めに就職し、まだ1週間しかたっていなかった。

 17歳で高校を中退し、工場やコンビニなど職を転々とした。どの職場でも持病の過呼吸が主な原因で長続きしなかった。親とも折り合いが悪く、昨年1月に実家を飛び出す。半年ほど路上生活を経験した。

 その後、NPO法人・北九州ホームレス支援機構(奥田知志理事長)に勧められ、生活保護を申請。病院を受診し「精神的理由で就労不可」と診断された。

 それでも「自分もお客さんも笑顔になれる。働いて人の役に立ちたい」との思いが強く、面接を受けた。採用され、これからという時の過呼吸…。「待っているから無理しないで」。職場で掛けられた言葉が唯一の救いだった。

 ■困窮の連鎖も

 厚生労働省によると、3月時点で生活保護を受けるのは、157万8628世帯で過去最多。このうち働ける世代を含む「その他の世帯」は28万8483世帯で、リーマン・ショックが起きた2008年度の約12万世帯から急増した。

 雇用情勢が悪化すると、中軽度の障害者、無資格、人間関係が苦手といった“就職弱者”から順に職を失う傾向が強まる。支援機構によると、若い世代も「親の代からの貧困で十分な教育が受けられずに就職できなかったり、精神的な要因で失職したりするケースが目立つ」という。

 支援機構は11年度から2年間、国の補助事業で困窮する若者の就業支援に取り組んだ。そこでは、事情が一人一人違うことから、行政や地元企業、医療機関と連携し、きめ細かいケアを目指したという。奥田理事長は「社会との関係性が絶たれた彼らに人の縁を築くサポートも大切」と話す。

 ■気力が薄れて

 働きたくても働けないという状況でなければ、自立を目指したい。福岡市のB男さん(35)は今年4月、生協が母体の社会福祉法人「グリーンコープ」にアルバイトで雇用された。月収は少しずつ増え、間もなく生活保護を抜け出せる見込みだ。

 5年前、上司の嫌がらせに耐えきれずに会社を辞め、妻子とも別れた。10年秋に派遣会社の登録を外れてからは、友人宅や漫画喫茶を転々とし、野宿もした。その間にうつ症状になり、働く気力は薄れていった。

 翌11年1月、グリーンコープが運営する生活困窮者の自立支援施設「抱樸(ほうぼく)館福岡」(福岡市東区)に入ることができた。うつの治療を始め、回復してくると「何とかしたい気持ち」が芽生えてきたという。

 ■心の立ち直り

 その年の秋からグリーンコープの就労訓練施設「ファイバーリサイクルセンター」に通い始める。中古衣料の仕分けなど簡単な作業からで、当初はだらけた服装や無精ひげを注意されることもあった。センターの香月伸太部長は「精神的ダメージがあるとすぐには働けない。体力や生活リズムも含めた立ち直りが施設の目的です」と話す。

 訓練とはいえ最大で月5万5千円が支給される。収入が増えればその分、生活保護費は減額されるが、反比例して「やりがいを感じるようになってきた」。1年半後、雇用を勝ち取る。

 ただ、このセンターで受け入れられるのは最大で25人。九州に同様の施設はなく、自治体は職員不足などで若い困窮者の支援にまで手が回らないのが実情だ。北九州市立大学の稲月正教授(社会学)は「雇用の不安定化が進む一方で、生活や就労を支える仕組みは十分とはいえない。継続的な寄り添い型の支援が求められる」と話している。

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 ●メモ

 ▼生活困窮者の支援事業 北九州ホームレス支援機構は2011年度から2年間、国の補助を受けて「若年者に対する伴走型就労支援事業」を実施。12年度は17~48歳の18人を対象に、履歴書や面接の指導、地元企業での就労体験(日当4千円)のほか、早起きなど生活面での自立も支援し、3人が就労を果たした。

 「抱樸館福岡」は、社会福祉法人グリーンコープに支援機構が協力して10年に開設(81室)。入居者を対象とした就労訓練事業も手掛け、今年3月までに47人が訓練を受けた。現在は14人が、中古衣料の仕分けや野菜の詰め替え作業をしながら一般就労を目指している。年齢制限はない。


=2013/06/22付 西日本新聞朝刊=

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