障害児も動物園満喫 北九州「到津の森公園」 夜間貸し切り 気兼ねなく

 ■くらし天気図■ 
 障害のある子どもたちに気兼ねなく動物園を楽しんでもらおうという国際的な活動「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」が6月、北九州市小倉北区の到津の森公園で開かれた。動物との触れ合いには、子どもの好奇心を刺激し、心を落ち着かせる効能があるという。ただ、障害児と家族にとって、行列に並んだり坂道があったりする動物園は、なかなか訪れにくい施設だ。夜の動物園で、障害児と家族にどんな「夢の体験」が訪れるのか。到津の森のドリームナイトに密着してみた。

 通常営業が終わった1日午後5時半、ドリームナイトが始まった。雨の中、障害児とその家族約370人が参加した。子どもたちはヤギの餌やりに挑戦し、ウサギやモルモットとの触れ合いを体験。トラを怖がって泣きだす子もいた。

 「実は、家族みんなで動物園に来たのは初めてなんです」。発達障害のある長男(11)が恐る恐るウサギをなでる姿を見つめながら、北九州市の主婦斉藤千穂さん(38)は打ち明けた。

 長男は順番待ちが苦手だ。突然大声を出して周囲に迷惑を掛けることもあり、家族で外出することはあまりない。「今日はほかの人を気にせず走り回れるので、楽しそうです」。千穂さんから笑みがこぼれた。

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 ドリームナイトは、1996年にオランダの動物園で始まった取り組みだ。通常営業中の動物園では、障害のある子が動物にいたずらをしたり、周囲に迷惑をかけたりしてしまう。そんな気兼ねから、来園をためらう家族に楽しいひとときを過ごしてもらうのが、活動の趣旨だ。

 現在は36カ国に普及し、国内では2005年に「よこはま動物園ズーラシア」(横浜市)が始めたのを皮切りに、18施設が開催している。到津の森公園では昨年6月に次いで2回目。九州では、ほかに熊本市動植物園も導入している。多くの園が6月に開催し、営業終了後の夜間を貸し切りにするという。

 到津の森では、スタッフが比較的自由に動ける午後5時半~8時に開催。車椅子利用者などのため、約90人のボランティアを配置した。園内はバリアフリー化され、移動時の障害は少なくなっているが、坂道では男性スタッフが車椅子を押すのを援助した。動物についてのガイドも、かんで含めるように丁寧に解説。屈託のない子どもたちの歓声が、夜の動物園に響いた。

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 国内のドリームナイトは、利用者の目線から徐々に改善が進められている。今年6月のドリームナイトに約3100人が来園したズーラシアでは、暗い場所や影を怖がる知的障害児に配慮し、照明を通常より明るく設定した。今年約900人が参加した上野動物園(東京)では、聴覚障害児向けに手話通訳のスタッフを配置するなどした。

 ただ、どの園も費用に加えて準備に手間がかかることから「年に1回が限界」と口をそろえる。到津の森公園の松岡裕史園長代理も「回数を増やすより、イベントで分かった照明など施設の問題点を改善し、障害者が普段から気兼ねなく来園できる態勢をつくりたい」と話す。

 国立特別支援教育総合研究所(神奈川県)の尾崎祐三研究員は「障害児のいる家庭はひきこもりがちなので、もっと多くの動物園が開催してほしい。園内で健常児との付き合い方を学ぶ場も設けるなど、いろんな工夫を重ねていい」と指摘した。

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 到津の森の取材で印象に残ったのは、子どもと親が家族ぐるみで楽しみ、喜ぶ姿。こうしたイベントの必要性は高い。企画を担当した獣医師の外平(そとひら)友佳理さんは「子どもたちに喜んでもらえただけでなく、一般のボランティアが障害児との接し方を学ぶ場にもなった」と手応えを語った。普段から障害児とその家族がためらわずに来園できるよう、一般利用者とスタッフ全体の心のバリアフリー化こそが大切だと、あらためて実感した。


=2013/06/27付 西日本新聞朝刊=

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