不妊治療、負担重く 費用100万円以上…55% 経験者アンケート 東京のNPO法人 仕事との両立に壁

不妊治療クリニックでの採卵の様子。治療が長引き、高度になるほど費用負担が大きくなる 拡大

不妊治療クリニックでの採卵の様子。治療が長引き、高度になるほど費用負担が大きくなる

 ■新訳男女 語り合おう■
  ●欠かせぬ周囲の理解 
 不妊治療を受けた人の55%が、総額100万円以上の治療費を負担している-。不妊に悩む人を支援するNPO法人Fine(東京)が当事者約2千人にアンケートしたところ、こんな結果が出た。治療と仕事の両立に悩む人も多く、Fineは「治療を続けるには周囲の理解が不可欠。当事者を取り巻く現状を知ってほしい」としている。

 調査は2010年に続いて2回目。昨年12月~今年3月にインターネットを通じて実施し、会員ら1993人が回答した。年齢層は35~39歳が37%、30~34歳が27%、40~44歳が21%、治療期間は2~5年未満が43%、1~2年未満が27%、1年未満が15%、5~10年が13%だった。

 調査の結果、通院を始めてからの治療費が100万円以上かかった人の内訳は「100万~200万円未満」25%▽「200万~300万円未満」15%▽「300万~500万円未満」11%▽「500万円以上」5%(四捨五入の関係で合計は55%)。

 治療費に加え、5人に4人が交通費の負担があり、1割は宿泊を伴う治療を受けたと回答。経済的理由で治療をためらったり、延期したりした人も「非常にある」「ややある」を合わせて8割を超えた。

 仕事との両立の難しさも浮かび上がった。「仕事や予定に支障をきたしたことがある」は87%。連日通院したり、卵子の状態で直前に日程が決まったりするため「仕事の調整に苦心している」との声も多かった。

 パートも含めて仕事を持つ約1700人のうち、3割近くは「偏見がある」「契約更新に響く」などとして治療を職場に明かしていなかった。4人に3人は「職場で治療のサポートがない」と答え、短時間勤務や時間単位で取得できる有給休暇など制度の充実を求める意見も多かった。

 前回調査で治療費総額が100万円以上だった人は47%で、今回は5ポイント上昇した。本年度から一部治療で公費助成が半減された影響もあり、窮状を訴える自由記述が目立ったという。Fineは「経済的な負担が増しており、生活費の中で占める割合が大きくなっているようだ」と分析している。

 ●公費助成、見直しへ 年齢、回数制限など議論 厚労省

 保険が効かない不妊治療の負担を軽減するため、国は2004年度から公費による助成を行っている。この事業について、厚生労働省は今年5月に有識者による検討会を設け、対象年齢や回数の制限を設けるべきかどうかの議論を始めた。背景には年々増加する受給件数と、患者の年齢層が上がり有効性と安全性が疑問視されていることがある。

 体外受精には1回につき30万~50万円がかかる。助成は少子化対策の一環として始まり、現在は所得が730万円までの夫婦に5年間で10回まで、1回最大15万円を補助している。年齢制限はなく、受給件数は04年度の約1万8千件から、11年度には約11万3千件と6倍以上に急増した。

 厚労省研究班(代表者=吉村泰典・慶応大学教授)は、07~10年に全国で行われた不妊治療について分析。件数が年々増える中、40歳以上の割合も上昇し、10年には36%を占めた。一方、年齢が上がるにつれて妊娠の確率は下がり、流産のリスクは高まる。治療が出産につながった割合は、32歳までは約20%でほぼ横ばいだが、36歳ごろから急速に下がり、40歳で8%、44歳で1%となった。

 高齢妊娠では合併症のリスクが高まるとの報告もある。研究班は3月に「助成に年齢制限を設ける場合、39歳以下とし、助成回数は2年間に6回と短縮するのが望ましい」との報告書をまとめた。検討会は、この提言も参考に事業の見直しについて議論。妊娠に関する知識の普及や助成対象となる指定医療機関の人員、設備の条件などについても検討する。

 患者団体として検討会に加わっているFineの松本亜樹子理事長は「財源が限られる中、年齢制限はやむを得ないとしても、39歳は厳しすぎる。移行期間が必要だということも訴えていきたい」と話している。

=2013/06/29付 西日本新聞朝刊=

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