【人の縁の物語】<23>家主待つ空き家 守る 管理代行業者 「思い出」そのままに

依頼された空き家の窓を開けて換気をする三好不動産の担当者。家が「呼吸」を始めたように感じられた 拡大

依頼された空き家の窓を開けて換気をする三好不動産の担当者。家が「呼吸」を始めたように感じられた

 所有者ははっきりしているものの、売却も解体もされない空き家が増えているという。きちんと管理されていないと、倒壊や犯罪の温床になる恐れがある。そこで管理を代行する業者も登場している。空き家が増える背景を探ろうと、梅雨の晴れ間のある日、三好不動産(福岡市)の「空き家サポートサービス」に同行させてもらった。

 静かな住宅街の一角にある一軒家。ポストには郵便物があふれ、庭には雑草が生い茂っていた。カーテンは閉め切られ、誰も住んでいないことが見た目からも、雰囲気からも感じられた。

 担当者が家主から預かった鍵で玄関のドアを開け、中に入る。閉め切った窓を開けて空気を入れ替え、水道を通水し、庭の除草をする。何となく家が再び「呼吸」を始めたようだ。部屋には服や日用品が残され、家主を待っているようだった。

 「施設に入るお年寄りが増える一方、思い出の詰まった家をそのままにしておき、いつかは戻りたいと希望される方が多いようです」。三好不動産資産活用部の長谷武さん(42)はそう話す。

 総務省が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」によると、2008年の空き家は全国に757万戸あり、総住宅数の13・1%を占め、増加傾向にある。

 核家族化で1人暮らしの高齢者が増えていること。さらに、亡くなった後の相続でもめるケースや、解体して更地にすると固定資産税が上がるなどの理由で手放さない人が多いという。

 そこで自治体が対策に乗り出している。2010年には埼玉県所沢市が、管理が行き届いていない空き家の所有者に勧告や命令を行い、従わない場合は氏名や住所を公表する「空き家条例」を全国で初めて制定。九州でも福岡県久留米市など各地で定められ、秋田県大仙市のように行政代執行で強制的に解体する動きも広がっている。

 管理サービスに乗り出す民間業者も全国的に増えてきた。三好不動産が「空き家サポートサービス」を始めたのは昨年11月から。福岡市と近郊を中心に、依頼主の家を月に1~3回訪問して管理を代行する。料金は一戸建てが9450円から、マンションが7350円から。

 福岡市の会社員女性(48)も6月から委託している。母親(75)が1人暮らしをしていた一軒家で、母が有料老人ホームに入居したため空き家になっていた。

 自宅からバス、電車、タクシーを乗り継いで1時間以上かかる場所にある。当初は自分で管理していたが、自身も更年期障害で体調を崩し、仕事をしながら通うのは体力的にきつくなった。

 一方で以前、いたずらで庭の水道が出しっぱなしにされたことがあり、防犯面が心配だった。何より母が「家に帰りたい」と望んでおり、手放すわけにはいかなかった。

 「経済的な負担は増えましたが『帰らなければ』というプレッシャーから解放されてホッとしています」。親の思いを誠実に背負ってきた女性の正直な思いだろう。

=2013/07/02付 西日本新聞朝刊=

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