【そもそも講座】子宮頸がんワクチン積極推奨中止 有用性は実証済みだが重篤な副作用の報告も

加藤聖子医師 拡大

加藤聖子医師

 ●子宮頸がんワクチン積極推奨中止
 
 厚生労働省が6月、子宮頸(けい)がんワクチンの接種を積極的に呼び掛けるのを一時中止したことで、接種対象の小学6年~高校1年相当の子のいる親たちに不安が広がっている。厚労省は接種後に激しい痛みが出た症例や海外での副作用の状況を分析し、リスクの程度を明らかにした上で、専門家会議の検討を経て、早ければ2~3カ月後に勧奨を再開したい考えだ。保護者はどう判断すべきか。九州大学病院の加藤聖子(きよこ)医師(産科婦人科)に聞いた。

 ●有用性は実証済みだが重篤な副作用の報告も

 -子宮頸がんとは?

 「赤ちゃんを育てる子宮の出口付近にできるがんです。ヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因で主に性行為で感染します。HPVは、性行為を行う女性の50~80%が一生に一度は感染するとのデータがあり、うち9割以上が2年以内に自然に排出されるとされています。排出されず数年から十数年にわたって持続的に感染した場合に、がんになることがあります」

 -日本での患者は?

 「年間約1万5千人がかかり、約3500人が死亡しています。20~39歳でかかる人が急増しており、子育て世代でもあるので家族への影響も大きいのです」

 -ワクチンの効果は?

 「子宮頸がんの50~70%は16型、18型のHPVが原因とされます。ワクチンはこの2種類の感染防止が可能で、世界保健機関も勧めています。感染やがんになる手前の異形成を90%以上予防した報告もあります」

 「ただ、他の型の感染を防ぐわけではないので、接種した人も、性交渉する年代になったら1~2年に1回は検診を受けるよう勧めています。日本の2009年の検診率(20~69歳)は24・5%で、70~80%の欧米と比べると極端に低いという問題もあります」

 -厚労省が「積極的に勧めない」としたのは?

 「複合性局所疼痛(とうつう)症候群など、接種後に激しい痛みが体中に広がる副作用が数十例報告されたためです。症状が重篤なので、きちんとした検証結果が出るまでの経過措置としては仕方がないと思います」

 「ただ、ワクチンとの因果関係がはっきりせず、これから調べる段階で『副作用の発生率が他のワクチンより高い』などと伝えられたのは残念です。世界で有用性が実証されたワクチンで、中止になった国はありません。副作用の出方には人種による差があるかもしれないので詳しく調べる-という段階です。保護者は冷静に対処してほしい」

 -とはいっても、親としては不安です。

 「感染経路は性交渉が主なので、その機会がない間は心配ありません。専門家会議の検討結果が出てから決めてもいい。ただ、中止ではないので、希望する人はこれまで通り無料で定期接種を受けられます」

 「知っておいてほしいのは、副作用ゼロのワクチンはないということ。リスクを最小限に抑えた上で、発症させないために、社会をウイルスから守るために、どのワクチンも導入されています。保護者はリスクを理解し、異常を感じたらすぐに受診することが大切。万一、健康被害が出たら公的な補償が受けられます」

    ×      ×

 ●「接種やめて」 被害者の会

 健康被害については「全国子宮頸(けい)がんワクチン被害者連絡会」の親たちが訴え続けてきた。その一人で東京都の会社経営男性(42)は、全身の痛みに顔をゆがめてうめく娘の姿を見るたびに「将来、がんにさせたくないという親なら当たり前の選択をしたはずなのに、代償は大きかった」と自責の念にかられるという。

 2年前の秋、市役所から通知が届き、当時16歳だった娘に予防接種を受けさせた。1回目の接種から帰宅すると微熱が出たが、気には留めなかった。2回目の後は膝が曲がらなくなる。ベッドから起き上がるのもつらそうで、はうように高校に通い続けた。

 エックス線撮影では骨に異常は見つからなかった。大学病院で検査しても原因不明。その間、症状は悪化するばかりで、手の指の関節も腫れてきた。翌年5月に3回目を受けると、肘と膝に「金づちで殴られているような激痛」が走った。

 インターネットを通じて似た体験を持つ親たちと情報交換をするうちに、副作用の疑いを強める。今年3月、被害者連絡会の結成に加わった。男性は「元気だった娘がこんな目に遭って悔しい。呼び掛け中止は、被害が増えないためにも良かった。今度は接種そのものをやめてほしい」と話している。 


=2013/07/06付 西日本新聞朝刊=

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