【こんにちは!あかちゃん 第7部】参院選 7千億円の行方<1>「産む前」の対策充実を

病院の指導で記録している基礎体温表。不妊治療を始めて半年が過ぎた 拡大

病院の指導で記録している基礎体温表。不妊治療を始めて半年が過ぎた

 英会話に料理教室。仕事に忙殺されて諦めていたことに今、挑戦している。全てはリフレッシュのため。その先に見つめるのは、赤ちゃんを抱く自分の姿だ。

 福岡県内の民間企業で働く千佳さん(42)=仮名=は今、妊娠に向けて心身の準備を整える「妊活休暇」を取得している。会社独自の有休制度で、期間は約3カ月。20年間バリバリ働いてきたから最初は落ち着かなかったが、ようやく肩の力が抜けてきた。

 「妊活」の本丸は不妊治療だ。この半年で6回の人工授精を試みた。保険が利かず、診察代を含めて月2万円ほどかかる。共働きで月約60万円の世帯収入があるとはいえ、休暇中は基本給のみなので出費が痛い。

 それでも結果が出なければ、次の段階へ進むことを考えなければならない。1回につき30万~50万円かかるという体外受精へ‐。

 《国は少子化対策の一環として、2004年度から不妊治療の公費助成に乗り出した。現在は5年間で10回まで、最大15万円を支給している。晩婚化もあって助成件数は増え続け、11年度は当初の6倍の約11万件、年間約200億円に膨らんだ。このため、国は本年度から一部治療で助成を半減させた。5月からは対象年齢や回数制限の見直し議論を始めている》

 現行制度でも、助成には夫婦の所得が730万円までという制限があり、千佳さん夫妻は対象外になる可能性がある。今の余裕のある家計は一変するだろう。「一度、体外受精に踏み出せば、きっと後戻りできない」。悩んでいるうちにもタイムリミットは近づいている。

 年齢を重ねるにつれて卵子が老化する。そうとは知らず、若いころは仕事に夢中で結婚すら考えられなかった。残業、休日出勤は当たり前。30代半ばで管理職を任されるまでになった。

 気が付けば40代が目の前に。さすがに焦り、結婚相談所に登録したりもしたが巡り合えなかった。一人で生きていこうと覚悟したころ、年下の夫と出会う。

 40歳で結婚。夫はすぐに子どもを望んだ。産婦人科に通うようになって、年齢が妊娠の壁になることを知り、がくぜんとする。

 「同じように働いていても、男性と女性では体の構造が違う。もっと早く知っていれば、人生設計は違ったかもしれない」

 《11年の平均初婚年齢は女性29歳、男性30・7歳。10年の生涯未婚率も女性1割、男性2割となり、晩婚化、非婚化が顕著になっている。そこで政府は今年3月、手薄だった結婚や妊娠の分野への支援強化に乗り出すべく、有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」を設置した。その議論の中で注目されたのが、妊娠・出産の知識を盛り込んだ「女性手帳」だ》

 結局、国が人生の選択に介入すべきでないなどと批判が相次ぎ、配布は見送られた。それでも千佳さんは「手段はともかく、啓発は必要」と実感する。

 というのも、妊娠、出産の壁になっているのが、年齢だけではないと思うからだ。勤めている会社の上層部は男性ばかり。家庭を顧みずに働く男性も多く、その仕事量と同等にこなさなければ一人前の評価はされない。だからなのか、出産後に時短勤務で働く女性の昇進スピードは遅い。自分もそうなるのだろうか。

 「国が主導して、企業内でワークライフバランス(仕事と生活の調和)や妊娠の知識について、男女とも研修する仕組みをつくってほしい」。男社会を是正することも、一つの少子化対策だと思う。

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 消費税が10%に引き上げられれば、増税分から年間7千億円が子育て支援に充てられる。少子化対策は国の重要課題の一つであり、21日投開票の参院選でも各党が関連公約を掲げている。私たちの血税は果たして有効に使われるのか。当事者家庭の家計簿と照らし合わせながら考えたい。

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 ●メモ=少子化

 2012年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)は1・41。過去最低だった05年の1・26を底に、わずかに上昇傾向を示しているものの、出生数は約103万7千人で過去最少を更新した。出生率の回復は、団塊ジュニア世代が出産期のピークを迎えたことによる一時的なものとの見方が強い。人口を維持するのに必要な水準は2・07とされる。水準は2・07とされる。


=2013/07/09付 西日本新聞朝刊=

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