【こんにちは!あかちゃん 第7部】参院選 7千億円の行方<2>「待機ゼロ」本気度は?

子どもを連れて出勤する母親。子育てをしながら働きやすい環境が整わない限り、少子化に歯止めはかからない 拡大

子どもを連れて出勤する母親。子育てをしながら働きやすい環境が整わない限り、少子化に歯止めはかからない

 混雑する通勤バスに、幼い息子を抱いて乗り込む。ぐずる声に周囲の視線は冷たい。会社に着いたころにはへとへと。そこで車通勤に切り替えることにした。中古車を買い、駐車場も借りた。また出費が増えた。

 「ただでさえ保育料が割高なのに」。福岡市の会社員、知子さん(37)=仮名=は2歳の一人息子を職場近くの認可外保育所に預け、フルタイムで働いている。

 保育料は月約7万円。認可施設なら公費助成があって7割程度で済むが、自宅近くの園は希望者が多く、申し込んでもいつ入れるか分からない。かといって、復帰の時期を延ばせば職場に迷惑がかかる。

 「待機」はせず、職場に近い認可外を選択した。割高な保育料、ガソリン代なども含めた通園にかかる諸経費…。結局、夫と2人合わせた収入の3割近くは子育て関連に消えていく。

 「夫婦で働いて税金を納めているのに、恩恵が受けられないなんて…。私の税金はほかの子の保育に使われているのでしょうか」

 《認可保育所に入れない待機児童は、昨年4月時点で約2万5千人。ただ、知子さんの長男のように申し込んでいない子などはカウントされず、潜在的には数倍に上るとされる。そもそも「待機児童ゼロ」は、小泉純一郎内閣が2001年に掲げた骨太の方針に盛り込んだ目標だった。その後十数年たっても解消されていない。参院選で公約に掲げる政党もあるが、今度こそ本気度が問われる》

 東京都内で今春、保育所に入れない親たちが集団で異議申し立てをする「ママ一揆」が起きた。その様子をテレビで見た知子さんは、痛いほど気持ちが分かるという。保育所の新設も確かに必要だが、今まさに子育て中の親にとって、数年後の「ゼロ」では意味がない。「今すぐ動いてくれないと」。子どもは成長を待ってくれない。

 ところで、知子さん夫妻が家計から子育てに充てる「3割近く」。出産前の収入があれば2割程度で済むはずだった。負担割合が高くなったのは、出産後、知子さんの給料が減ったからだ。その額10万円。3分の2に減っている。

 仕方ないという思いもある。職場には育児休業、短時間勤務、看護休暇など法で定められた一通りの支援制度がそろう。このうち、日常的な残業を免除してもらう制度を利用している。

 ただ、仕事量は変わらない。10人の部下を抱える管理職。残業できない分、集中力と早朝出勤でカバーする。息子が発熱するたびに早退して肩身の狭い思いをしても、歯を食いしばるしかない。

 一方、結婚、出産で辞める同僚は多い。「制度は整っていても浸透していないし、利用しやすい雰囲気もない」。育休から復帰後、残業続きで退職に追い込まれた人もいた。管理職の一員として、自分にも責任の一端があると思う。

 《昨年度の国の雇用均等基本調査によると、時短勤務などの制度を導入する企業は約62%。国は制度の定着を図ろうと、事業所内保育施設の設置や育休取得者の代替要員確保など、両立支援助成金として約61億円(昨年度)を企業に支給している。しかし、第1子出産を機に約6割の女性が退職。男性の育休取得率は1・89%と低迷したままだ》

 知子さんの夫も管理職。その職場も育児支援制度は整っているものの、男性の取得例はない。夫は周囲の目が気になるのか、仕事を抜け出して息子のお迎えに行ったりはしてくれない。帰宅時間は不規則で、子育てや家事の戦力として「まったくあてにならない」。

 「夫がもっと積極的に関わってくれない限り、2人目は考えられません」。企業の姿勢を変え、夫の背中を押してくれる政党はあるだろうか。

 ●メモ=待機児童

 2009年以降、4年連続で2万人を超えている。保育所数も増えているが、共働きの増加による需要増に追いついていないのが現状だ。認可保育所に申し込んで入れない子どもが全て待機児童になるわけではない。数え方は自治体によって異なり「近隣に空いている保育所がある」「親が自宅で求職中」といった場合などは除外される。都市部では諦めて申し込んでいない人もいるため、潜在的ニーズはもっと多いとされる。九州7県では12年4月時点で約1900人。

=2013/07/10付 西日本新聞朝刊=

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