米軍訓練移転・馬毛島写真 防衛省 市通さず入手図る 地形図に無断流用 計画?

 日米両政府が米軍機の訓練移転先として合意した鹿児島県・馬毛島(西之表市)の調査事業で、防衛省が市の所有する島の航空写真を無断流用しようとしていたことが、関係者への取材で分かった。移転に反対する市は「頭越しだ」と反発。無断流用の指摘後も「安全保障上の公益性」を理由に写真提供を再三迫る同省との溝を深めている。専門家は「市に提供の法的義務はない。防衛省の強引な姿勢は、沖縄の民意を無視して進める米軍普天間飛行場の移設と同じで、馬毛島は『第二の辺野古』だ」と指摘している。

 事業は2011年6月の日米合意後初の調査で、15年10月から約5カ月かけ、既存の航空写真を基に島の地形図を作成する。関係者によると、防衛省は市が移転を認めず、地権者との用地買収交渉も難航する中、新たに撮影すれば反発を招くと判断、既存の写真を使うことにしたという。

 防衛省は、事業に先駆けて昨年9月ごろ、鹿児島県土地改良事業団体連合会(鹿児島市)に対して写真提供を要請。同会が14年度に西之表市の依頼で農地調査用に島全域を撮影した写真の提供を求めた。同会は「写真の著作権は市にあり、提供すれば無断流用になる」と伝えて断った。鹿児島県も経緯を把握しており、県幹部は「市に提供を要請すれば反発されるのは目に見えている。このため防衛省は連合会からこっそり写真をもらおうとしたのではないか」と指摘する。

 その後、防衛省は市に写真提供を要請。担当者を派遣して長野力市長に直接要求し、文書でも繰り返し求めた。「公益性の観点から市は提供しなければならない」と主張したという。市は(1)提供に法的根拠はなく、写真の目的外使用に当たる(2)市議会が移転反対を決議した-ことを理由に拒否を決めた。市幹部は「防衛省の要請は、断れば市が不利益を被ると受け取れる内容もあった。本来、国と地方は対等であるはずなのに、防衛省の態度は脅迫に近い」と憤る。

 地方自治に詳しい鹿児島大の平井一臣教授(政治学)は「安全保障は国の専権事項だが、写真の無断流用を試みたとすれば、自治の筋道に反する」と防衛省を批判。琉球大の徳田博人教授(行政法)は「市が拒否する背景に騒音や事故、米兵犯罪への住民不安がある。国の強引な姿勢は沖縄と同じで、地方との対立をあおっている」と分析した。

 九州防衛局は「調査に使う(写真などの)データの入手方法は明らかにできない。調査は予定通り進めている」としている。

(※2016年01月14日 西日本新聞朝刊掲載時のものです)

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