【君(ペット)がいるから】<1>避難は動物と一緒でこそ

 4月14日。熊本地震の前震直後から、動物たちが次々に運ばれてきました。熊本市中央区の「竜之介動物病院」も大きな揺れで棚が倒れたりしましたが、片付けは後回しで、ひたすら診療に当たりました。その後にもっと大きな本震に襲われるとは思わず「予想より被害が少なくてよかった」と考えていました。

 そして、16日午前1時25分。疲れて一時帰宅していた時でした。ドーンと切り裂くような音とともに突き上げるように激しく揺れ、携帯電話の地震速報が鳴り響きました。明らかに14日より大きな衝撃でした。

 揺れが収まるのを待たず、はうようにして着替えをつかむと、そのまま車を病院まで走らせました。10分ほどで病院に到着して目にした光景は、動物病院に集まった人々。道向かいのコンビニにも人が集まっていました。真っ暗な中、周辺で明かりがついているのは、24時間開いている私の動物病院とコンビニだけだったため、明かりに導かれて人が集まっていたのです。

 前震よりも多くの人と動物が駆け込んできました。どこかで水道管が破損したようで、階段を滝のように水が流れています。避難者と協力して対応していると、前震の日と同様、地震でけがをした動物、激しい揺れにパニックを起こして交通事故に遭った動物たちが、一刻を争う状態で運ばれてきます。

 診療を優先しながら、避難してきた方々を見て回り、声を掛けました。私自身も前震の日ほどの冷静さはなく、冷静さを装うことで精いっぱい。実は記憶が前後しており、はっきりと覚えていません。

 ただ、私の動物病院に避難してきて身を寄せた方々は、これだけ大きな地震に見舞われながらも落ち着いていました。動物たちと離れることなく、ギュッと身を寄せ合って避難していたからだと思います。人と動物(ペット)は持ちつ持たれつの関係です。「緊急時だからこそ、人と動物は離れちゃいけない」と強く思いました。

 人は自分のためよりも、誰かのための方が強くなれます。自分のためではなく、愛するペットのために生きている方もいます。「この子(ペット)たちのために…」と日々暮らしているので、その動物たちを置いて避難すると、生きる意味を見いだせない方もいます。

 人を助けるのなら、動物も一緒に助けなければいけません。熊本地震を体験し、より強くそのことを伝えたいと思っています。ペットは家族の一員というだけでなく、社会の一員にしなければと感じています。
(竜之介動物病院長、熊本市)

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 熊本市の獣医師徳田竜之介さん(54)が、24時間診療の動物病院診察室から見える現代のペットと人間の姿をつづります。


※この記事は2016/08/04付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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