【こんにちは!あかちゃん 第7部】参院選 7千億円の行方<5完>「責任」分かち合って

 楕円(だえん)球を追う息子たちの姿を見ていて、つくづく思う。長い人生、どちらに転ぶか分からない。選択肢は広い方がいい、と‐。

 公務員の信夫さん(48)=仮名=には2人の息子がいる。いずれも私立高校に通い、小学校から続けてきたラグビーに情熱を燃やしている。2人とも私立となれば、学費がかさむ。それは覚悟の上だった。高校受験にあたり、まだ15歳のわが子に「できれば公立に」などとプレッシャーをかけるようなことはしたくなかった。

 学費や通学の費用を合わせると、2人で月16万円。部活動に3万円。しかも食べ盛りだけに、食費もばかにならない。それでも「子育てと教育は親の責任」と言い切る。

 《2010年4月から、高校無償化制度が導入された。公立の授業料月額9900円を国が負担。私立も年間約12万円の就学支援金を学校に支給し、授業料の一部に充てる。いずれも所得制限はない。ただし、私立の授業料は全国平均で年間38万円ほど。公立でも授業料とは別に校納金がある。「無償」とはいえ、全費用をカバーできているわけではない》

 信夫さんの息子2人も支援金の対象になっている。その上で学校にはそれぞれ月4万9千円を納めなければならない。「親の責任」と言い切れるのは、世帯収入が月50万円以上あるからこそ。その点では妻(49)と、そして妻が働いている会社にも感謝している。

 妻は健康食品会社の従業員。専業主婦だったが、長男が小学校に入る前に「子育てにはお金をかけたい」と思い立ち、新聞の求人広告に応募した。35歳の中途採用ながら、会社は正社員として迎えてくれた。

 英会話、水泳、学習塾。特にラグビースクールには熱を入れた。仕事の合間に足を運ぶグラウンドで、練習に夢中になっている息子たちを見ていると、共働き生活の疲れは吹き飛んだ。

 《高校無償化が導入された10年の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出は3・6%。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均5・4%を下回り、比較可能な30カ国の中では4年連続で最下位だった。OECDは「私費負担が大きい。教育への投資は個人と社会の双方に利益になる」として公的支出の拡大を勧奨している》

 長男は3年生になり、大学受験が目前に迫る。合格すると、入学金に授業料、さらに親元を離れることになれば仕送りも必要になってくる。もちろん「親の責任」で工面する覚悟だが、家計を今より切り詰めなければならないのは確実だ。

 「家庭の経済力に左右されず、すべての親が理想に描く教育を実践でき、子どもたちはそれを享受する。そんな国になってほしいですね」と信夫さん。21日投開票の参院選では、子どもたちへの責任を分かち合える候補や政党に1票を投じようと思っている。

 =おわり

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 ●メモ=高校無償化の見直し論議

 高校授業料の無償化については、下村博文文部科学相が2014年度から、年収が800万~900万円を上回る世帯を対象外にする所得制限を主張。これによって生じる財源を、低所得者への給付型奨学金などに充てる考えを示している。この奨学金について、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が反発。経済的理由で中退する高校生は0・03%にとどまり、既に都道府県が無利子奨学金を設定していることなどを挙げ、浮いた財源は「教育の質向上」に充てるよう提言することにしている。現行制度に所得制限はない。


=2013/07/13付 西日本新聞朝刊=

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