【忘れてませんか? 参院選 課題チェック】<1>教育 子どもの「成長戦略」は

福間中学校の体育館であった「トーク・フォークダンス」。教育や学校のあり方について、ざっくばらんに語り合った 拡大

福間中学校の体育館であった「トーク・フォークダンス」。教育や学校のあり方について、ざっくばらんに語り合った

 なるほど、その風景は確かにフォークダンスに似ていた。

 福岡県福津市の市立福間中学校で3日夜、保護者と地域住民、教員ら約100人が集まり、意見交換会があった。テーマは「子どもたちが輝く地域づくり」。その手法が「トーク・フォークダンス」と呼ばれるものだった。

 体育館にはパイプ椅子が大小二重の車座に並べられ、話が一段落すると、外側の人が一つ隣にずれ、対話のペアが変わっていく。

 地域に開かれた学校を目指す「コミュニティ・スクール」。同校は2年前に指定を受けた。この日の取り組みはその一環だった。

 1、2分と時間を区切り、話題を変えていく。まずは「思い出の場所」「好きだった給食メニュー」など。座が和んだところで「あの時、子どもにこうしてあげれば良かったと思うこと」「今の中学生に伝えたいこと」など、本題へと向かった。

 車座の中には、母校に今春着任したばかりの校長の姿も。「地域の人々は、学校の応援団ですからね」

 東京都の小学生が男に切りつけられた先日の事件も頭によぎる通学路の安全、地域を舞台にした体験活動、いじめ、不登校対策…。どれも学校だけでは対応できない。地域からの直言苦言を含め、学校改革につなげようとする、現場の模索がそこにある。

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 その一方、安倍晋三首相主導の教育再生実行会議では、教育改革に向けた矢継ぎ早の議論が進む。

 大学入試センター試験を廃止し、高校在学中に複数回受けられる「到達度テスト」の導入▽首長が任免する教育長に権限を集中させる教育委員会制度の見直し▽小学校英語、道徳の教科化▽公立学校で土曜日にも授業を実施する学校週6日制の導入…。

 主なものだけでもざっとこれだけある。

 その背景には、少子化、グローバル人材の育成、いじめ問題、学力強化などがあり、政治主導での教育改革のうねりが今秋から加速しようとしている。国や政治が教育にどこまで関与すべきか、関係者には冷静な議論を求める声も少なくない。

 参院選の争点として、教育問題はかすみがちだ。しかし、憲法問題は教科書のあり方につながり「3・11後」の時代を切り開き、これから社会や地域を動かしてゆく子どもたちの教育の行方も、実は岐路に立っているように思える。

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 脱ゆとり教育の流れの中で、コミュニティ・スクール制度を導入したこの中学校でも、保護者から生徒の学力強化を求める声が高まっているという。

 ただ、教務主任で数学担当の教諭(45)は「県、全国、世界平均と、よりスケールの大きな物差しで学力を測ろうとする風潮が強まっている。でも、私たちが一番悩んでいるのは学力格差。学ぶことの意味、学びの土台づくりこそが、求められているのではないでしょうか」と、複雑な表情を浮かべた。

 子どもたちの「成長」とは何か、そのために優先すべき教育施策、制度の見直しは何か。経済成長戦略に注がれる熱視線と同じように、子どもたちの成長戦略も問われている。

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 21日に投開票される参院選も終盤戦に入った。経済政策アベノミクス、憲法改正、原発政策などを争点に、各党の攻防が繰り広げられているが、身近な暮らしの視点から注がれる有権者のまなざしもある。編集委員4人がそれぞれの分野から考えてみる。

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 ●メモ=コミュニティ・スクール

 学校と保護者、地域住民らでつくる「学校運営協議会」が学校の運営に関わる制度。地方教育行政法改正を受け、2004年度から導入された。合議制の機関で、メンバーは教育委員会が任命する。PTAよりも強い権限を持ち、教職員の人事や学校運営について、法的な権限を持って意見を述べる。学校・地域・家庭が連携した教育、地域づくりを進める狙いがある。全国では計1570校・園(小中高校、幼稚園、特別支援学校、今年4月現在)が指定を受け、活動を続けている。


=2013/07/16付 西日本新聞朝刊=

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