【君(ペット)がいるから】<4>往診 喪失感に寄り添う

熊本県益城町への往診。倒壊家屋のそばで犬の様子を診る徳田竜之介さん(左) 拡大

熊本県益城町への往診。倒壊家屋のそばで犬の様子を診る徳田竜之介さん(左)

 熊本地震発生から24日たった5月上旬。「竜之介動物病院」(熊本市中央区)に開いた動物同伴避難所が役目を終えて、私はやっと病院の外に出る時間ができました。ずっと気になっていたのは、避難所に来なかった動物たち。そこで、まず被害の大きかった熊本県益城町に足を運びました。

 倒壊家屋が連なり、爆弾でも落ちたのかと言葉を失いました。とにかく時間の許す限り、動物と一緒の人に声を掛けて様子を診ました。避難所に行けずにガレージで生活している飼い主と犬、飼い主とはぐれて迷子になっているたくさんの犬や猫、揺れに驚いて逃げる際に剥がれたと思われる爪の部分がうんでいる猫…。飼い主も車を失っていたり、自らの生活の立て直しが優先されたりして、治療に連れて行けないペットもいました。

 ペットを失った悲しみから立ち直れないペットロスに苦しむ人にも出会いました。庭で建物の下敷きになって死んだ犬の飼い主は、がれきに向かって何度も犬の名前を呼んだそうです。1カ月半もがれきの中から亡きがらを見つけてあげられず、見つかったときは白骨化しており、赤い首輪だけで判別したという人、避難所に一緒に連れて行かなかったせいでペットを死なせたと後悔している人もいました。

 ペットという家族を失った悲しみと喪失感を抱えたままでした。にもかかわらず、震災で苦労している人がたくさんいるときにペットの話なんかしていいのか、話しても「動物でしょ?」「人間は助かったからいいじゃない」などと
言われ、分かってくれる人はいないのではないか、と悩んでいました。

 私が耳を傾けると、せきを切ったように次から次へとペットとの思い出、失った悲しみを吐き出してくれました。話し終わると「心がすっとしました。今日から前を向いて進めます」と言った人もいました。震災で傷ついた人たちの心の復興には、時間がかかるのだと痛感しています。

 被害が大きかった地域ほど、往診の必要性があることも分かりました。益城地区には7月上旬までに4~5回、足を運びました。迷子の飼い猫たちが繁殖して増える恐れもあったため、7月6日にはボランティアの獣医師4人を募って現地に赴き、迷い猫を捕獲して計16匹に不妊手術を施しました。

 皆さんが動物という家族と安心して暮らせるように、私たちは今後も微力ながら取り組みたいと思っています。たとえ時間がかかっても、本当の意味で笑顔を取り戻す日まで、私たちはずっと寄り添い続けます。熊本の痛ましい被害が風化することなく、今後の教訓として生かされていくことを心から願っています。

 (竜之介動物病院長、熊本市)


※この記事は2016/08/25付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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