特別な夕日 地域に生かせ 「嵐」出演CMで注目 福岡・福津市 沈む時間・方位示す「夕陽風景時計」好評

 空全体を薄桃色に染め、ゆっくりと沈んでいく夕日-。この春、宮地嶽神社(福岡県福津市)から見る夕日が人気グループ「嵐」の出演するCMに登場し、同じ夕日を見たいと訪れる観光客が増えているという。その福津市に、特別な夕日をまちおこしに生かそうと活動を続けている“夕日おじさん”がいる。その日の何時に、どの方向に夕日が沈むかが分かる「夕陽(ゆうひ)風景時計」を考案した緒方義幸さん(75)。長年かけて実用化したユニークなアイデアが、いま話題だ。

■ループ曲線描く

 緒方さんが夕日の美しさにとりつかれたのは約20年前。米ハワイのワイキキで水平線に沈む夕日を見て「ここでしか見られない風景」と感動したという。

 帰国後、福津市の海岸をウオーキングしたとき、赤々と海を染めて水平線に沈む夕日に「何だこれは」と息をのんだ。ハワイどころではない。もう一度見たいと別の日の夕方に同じ海岸に行くと、夕日は水平線ではなく島影に沈んだ。「日によって沈む位置が変わることを知らず、驚いた」という緒方さん。夕日が水平線に沈む日、島影に沈む日などを前もって知ることはできないかと考えた。

 国立天文台が提供する、日本各地の日の入り時刻と方位の情報を見つけ、定点からの距離、角度を示す極座標上に落としてみると、ループ曲線を描いた。かつてマンション販売の仕事をしており、同僚に教えてもらった建築技術を応用したという。

 曲線の方位、時刻が実際の夕日と合っているか確かめるため、図面を海岸の喫茶店に置かせてもらい“実証実験”をしながら修正を重ねた。さらに海岸から見える水平線上の岬、島など目印になる地点を描き込んで「夕陽風景時計」として2008年に実用新案を取った。

■イベント計画中

 住民グループの協力を得て、これまで3カ所に夕陽風景時計を設置した。福津市宮地浜の夕陽風景時計は、「嵐の夕日」で有名になった宮地嶽神社の参道上にある。ほぼ正面に相島(同県新宮町)が見え、さらに玄界島、志賀島(いずれも福岡市)などが目印に描かれている。例えば、福津市が誕生した1月24日を曲線上に探すと、午後5時半ごろ玄界島北側に沈むことが分かる。「自分の誕生日、何時にどの位置に夕日が沈むかを調べることができますよ」と緒方さん。夕日を狙うカメラマンたちにも好評で、口コミで情報が広がっている。

 2月には福津市畦(あぜ)町の住民が手作りした神社の展望所に夕陽風景時計を設置した。畦町は内陸部のため、夕日はほぼ年中、山に沈むが、山の切れ目からわずかに玄界島が見えるのを発見。曲線上で計算したところ、2月中旬と10月下旬の2回、玄界島の上に夕日が沈むことが分かった。住民はさっそく、この時期に合わせたイベントを計画中だ。

 夕日と古里の風景を組み合わせることで特別な日が生まれ、まちおこしの発想が膨らむ。「次は日の出や月の出時計にも挑戦してみようかな」。緒方さんの着想も膨らむ。

この記事は2016年03月29日付で、内容は当時のものです

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