ともに自立へ 生活困窮者支援制度<3>障害と浪費 やりくり見直し再建―連載 佐賀県

 「仕事がない。生活保護を受けたい」。優子さん(41)=仮名=は昨年6月、町役場で訴えた。役場は県生活自立支援センターを紹介し、センターの依頼で相談支援員のファイナンシャルプランナー江頭こず恵さん(52)が優子さん宅を訪れた。

 江頭さんは驚いた。一軒家に車が3台。屋根には、太陽光パネルもあったからだ。

 生活の困窮には、浪費や収支に見合わない高額の契約が隠れていることもある。優子さんのケースが、まさにそうだった。

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 優子さんは同い年の夫と弟との3人暮らし。以前は3人とも働いていたが、数年前に夫が心臓病を患って失業し、自らも昨年初めに軽作業の仕事を辞めた。土木作業員として働く弟の月収約14万円が頼みという。

 「優子さんの仕事が見つかるまで、弟さんにもう少し支援をお願いしましょう」。江頭さんは弟に相談したが、弟にも数百万円の借金があることが分かった。

 住宅ローンの残高は約1千万円。月々の支払いに加えて年2回のボーナス払いが1回40万円。優子さん夫婦には、勧誘されるがままに契約した月額7万円の生命保険料代もあった。

 食費は3人で月3万円。貯金に余裕はなく住民税も滞納していた。優子さんと夫は軽度の知的障害で中学、高校は特別支援学級に通っていたが、成人後は障害者福祉の支援を受けていないことも分かった。

 知的障害者の自立に取り組む長崎県地域生活定着支援センター(長崎市)の伊豆丸剛史所長(40)は「障害者が貧困になるのは、周囲の理解や適切な支えがなく孤立し、生きづらさを抱えた結果」と指摘する。

 優子さんは「困っていることを人に話せば、悪いうわさになる。話せないと思った」と、追い詰められるまで誰にも相談しなかったという。

 「家計の問題は世帯の問題」と江頭さん。1人の問題を解決しても、他に見落としがあれば改善は難しい。「相談者の話に耳を傾け、世帯全体の問題をひもとくことが大切」と語る。

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 生命保険は一部を解約。借金は住宅ローンを払いながら他の債務を整理する「個人再生」の手続きが決まった。一般的な就職が難しければ障害者福祉の事業所も紹介するよう、関係機関との調整も始まった。

 昨年12月25日、町役場で江頭さんと優子さんは新年の暮らしを話しあった。電気代、水道代、ローンに食費…。経費を一つ一つ書き出して家計計画表にした。

 「正月は、レトルトのカレーば食べます」と言う優子さんに、江頭さんは「正月は良いものを食べて、2月までに月4万円稼げる仕事を探しましょう。もう少しの辛抱、きっと良い方向にいきます」と励ました。

 優子さんは「履歴書ば、用意したがいいでしょうか」と意欲を見せた。

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 ●ワードBOX=家計相談支援

 生活困窮者自立支援制度の任意事業で、借金や料金滞納、収入と支出の管理ができないなど、家計に問題がある人の相談に応じて生活再建を手助けする。家賃や食費、交遊費などの収支を書きだして問題点を把握し、本人に理解させる。自己管理可能な改善計画を立て、継続的に見守り、助言する。債務や就労の問題があれば、関連機関につなぐ。計画的やりくりで浪費や悪循環に陥ることを防ぐ。

この記事は2016年01月22日付で、内容は当時のものです。

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