ニンノンに会いたい スマトラ沖地震 少女を救ったタイの子象 背中に乗せ全力で走った

 ●奇跡の少女は今20歳、再会誓う

 2004年のスマトラ沖地震で、津波から少女の命を救った象がタイにいる。名前はニンノン。当時は4歳のメスの子象だったが、海の異変を察知し、背中に1人の少女を乗せたまま海岸から高台に疾走したという。あれから12年、ニンノンが再び脚光を浴びている。(バンコク浜田耕治)

 バンコクから車で3時間。「戦場にかける橋」で有名なクウェー川鉄橋があるタイ西部のカンチャナブリ県に“彼女”はいた。

 見上げるほど大きいが、他の象に比べると幾分小ぶりだ。カメラを向けると、恥ずかしがり屋なのか、ゆっくり後ずさりした。「ニンノンはいい子ですよ。16歳は人間でいうと未成年。時々いたずらもする。まだ子どもです」。オーナーのソムヌック・シッチャナさん(52)が目を細める。

 「そうそう、こっちに移ってから名前を変えました。壮絶な体験をしたからね。気分を変えるため。今の名前はバイトーン(バナナの葉っぱ)。パトンビーチと響きが似てるでしょ」

 ニンノンは津波に遭遇した際、タイ南部プーケットのパトンビーチで働いていた。当時はソムヌックさんの親戚が飼っていたが、街に甚大な被害が出たため、05年に8ヘクタールの敷地を持つこのエレファント・キャンプに預けられたという。

      *

 世界の津波災害の中でも最悪規模といわれるスマトラ沖地震。発生は04年12月26日。津波はインドネシアやタイなどを襲い、インド洋沿岸諸国の死者・行方不明者は22万人を超えた。日本人も犠牲になった。

 英国人のアンバー・オーウェンさん(20)は当時8歳。家族旅行でプーケットを訪れていた。ホテルにいた子象のニンノンに毎朝、バナナを与え、背中に乗って海岸沿いを散策するのが大好きだった。

 「その日、私は海水が急に引いていくのに気付きました。人々は魚を捕りに海に向かいました。でもニンノンは動揺していた。危険が迫っていると感じたのでしょう。陸地に向かって全力で走り始めました」。アンバーさんは英メディアにこう語っている。

 ニンノンは小さな壁を見つけると、その後ろに体を押し込み、強烈な波の力に耐えたという。背中に乗っていたアンバーさんも、奇跡的に助かった。

      *

 「象は本能的に危険を察知する能力が高い」。象をトレーニングして30年のソムヌックさんは断言する。「台風が近づくと耳を広げたり、尻尾を激しく振ったりするんです。そんな時は象たちをより安全な所に移すようにしています」

 英国ではアンバーさんの奇跡のエピソードが演劇の題材になり、メディアで再び取り上げられた。タイの地元紙が6月に入り、ニンノンの居場所を報道したことで、キャンプを訪れる人も次第に増えている。

 「『ニンノンはどれ?』ってみんな聞いてくるよ。また人気者になったね」とソムヌックさん。ニンノン健在の報は、英国にいるアンバーさんの耳にも入ったらしい。「ニンノンにぜひ会いたい。年内にはタイに行きます」。そんなメッセージが届いたという。

この記事は2016年07月04日付で、内容は当時のものです。

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ