【忘れてませんか? 参院選 課題チェック】<4完>医療 「心ある人」の力生かせ

 病気やけがで苦しむ人たちを支えようとするのは、医師や看護師などの医療職だけではない。多くの市民も支える側に回ろうと奮闘しており、その場面は各地で見られる。

 その一つが8日、福岡市南区の九州がんセンターの一室で開かれた「福岡がんピアサポート講座」だ。受講者として集まったのは、がん体験者や家族、遺族の計約30人。

 午後1時開始。45分の講義が3コマ続く。講師役は九州がんセンターの医師や看護師。受講者たちは「がん治療における看護」「緩和ケア」などについての講義に耳を傾け、熱心にノートを取った。

 この講座は5月から9月までの計10回。福岡がん患者団体ネットワーク「がん・バッテン・元気隊」(波多江伸子代表)が、九州がんセンターなどの協力を得て企画・実施している。

 受講者に10回すべての参加を求め、がんの基礎知識や患者の心理・生活について学んでもらい、がんの「ピアサポート」活動に必要な力量を身に付けてもらうのが目的だ。

 がんの「ピアサポート」とは、がんを体験した人や家族が、仲間(ピア)として、患者や家族を支援すること。支援者はピアサポーターと呼ばれる。

 福岡市南区の古賀裕子さん(60)も受講者の一人。3年前に乳がんの告知を受け、「自分の死」を初めて意識した。不安にさいなまれる日々の中で、寄り添ってくれた看護師のぬくもりをかみしめた。手術を受けて症状が落ち着くと、これからは人の役に立つ生き方をしなければ、との思いがわき上がってきたという。

 「それで何か私にできることがないかと、乳がんの患者会に入ったのですが、そこで悩みや心配事の相談にちゃんと応対するためには、きちんとした知識を持つ必要があると思ったのです」。今回の受講理由をそう語る。

 ☆ ☆ 

 医療や介護に関する勉強会を催す市民団体。車椅子利用者の移動を介助したり、入院する子どもたちに絵本を読んであげたりする病院ボランティア…。

 何らかの形で患者の役に立とうと活動する市民は、ほかにも大勢いる。そんな「心ある人」たちの力がより発揮されるためには、世の中の仕組みに手を加える必要がある場合も少なくない。

 例えば、波多江代表(65)は「がんピアサポート講座の受講修了者は、医療機関の診療の場でも活躍してほしい」と願っている。患者の医師への要望を聞いたピアサポーターが、それを医師にすぐに伝え、事態の改善を図ることができたりすると考えるからだ。

 だが、波多江代表などによると、ピアサポートを診療の一環として位置づけて導入を図る医療機関は、ほとんど見当たらないのが現状だ。背景には、国は昨年作成した「がん対策推進基本計画」に「ピア・サポートをさらに充実するよう努める」と盛り込んだものの、その制度化に乗り出していないことがある。医療機関が導入に動くには、公的資格の創設などが必要だろう。

 高齢化が進み、公的医療保険で賄われている医療費は膨れ続けている。財政事情は厳しく、国民皆保険の持続が危ぶまれている。

 しかし、今回の参院選では、その立て直しをどうするかの論争は低調な印象だ。

 一層の経済的負担を国民に求めることが難しい中で医療の安定・充実を図るためには、患者を支える側に立つ「心ある人」たちの力をもっと生かす視点が、これまで以上に必要ではないか-。私自身はそんなことを考えつつ、1票の投じ先を思案し続けている。

 =おわり

=2013/07/19付 西日本新聞朝刊=

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