折り鶴再生紙 平和発信 名刺やカレンダー、封筒に加工 長崎市 コスト大が課題に 長崎県

 長崎原爆資料館(長崎市平野町)にささげられた千羽鶴(折り鶴)の一部が、名刺台紙やカレンダー、封筒などにリサイクルされている。オバマ米大統領が5月に広島市を訪問した際に贈った折り鶴が、9月3日から長崎で展示されることが決まるなど、折り鶴は平和祈念の象徴でもある。だが、リサイクルには多額のコストがかかるという。長崎市が事業として継続していくのは難しいようだ。

 市平和推進課によると、原爆資料館には国内外から折り鶴が寄贈され、例年、総重量は500キロ前後に及ぶという。館内で一定期間展示した後は、市が古紙回収に出したり廃棄処分したりしていたが、2012年9月の市議会一般質問で「平和への願いが詰まった折り鶴を何とか生かせないか」と活用方法が議論されたこともあるという。

 再生紙化の取り組みに手を挙げたのは、井上勲紙店(長崎市栄町)。和紙の産地として知られる福岡県八女市にある中村製紙所の協力を取り付け、800キロほどの折り鶴を使って加工、試作品を製作することになった。金や銀の折り鶴は再生紙として使えないため取り除き、束ねているひもも引き抜く必要があった。

 試行錯誤を重ねる中で、再生紙のうち、折り鶴の配合率は約15%が限度だと分かった。13年秋に和紙の試作品が完成。井上勲紙店の井上順平会長は「折り紙の赤色や緑色がちりばめられた、おしゃれな紙ができた」と胸を張る。縦110センチ、横87センチの再生紙を4千枚製造。厚さは2種類用意した。

 折り鶴再生紙は、市職員が使う名刺台紙や、被爆70年となった2015年のカレンダー(壁掛け、卓上)、一筆箋、封筒などに生まれ変わった。今月9日の平和祈念式典では、折り鶴再生紙に書かれた平和宣言を田上富久市長が読み上げたという。

 ただ、再生紙が製造されたのは1度だけという。「折り鶴リサイクル」を事業として継続するには市場が小さく、コストがかかりすぎることが壁となった。

 同様の取り組みの先進地として知られるのは、同じ被爆地の広島市。2歳で被爆し、10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さん(当時12歳)がモデルの「原爆の子の像」(平和記念公園内)に寄贈される年間約10トンの折り鶴をNPO法人などが回収。障害者施設で選別された後、製紙会社が再生紙にしてさまざまな商品開発に生かしている。

 収支を安定させるには大量の折り鶴が必要になるため、沖縄県など各地の戦跡や資料館に寄贈される折り鶴も受け入れているという。長崎市も今年7月に50キロ分を広島市に送った。

 長崎市平和推進課の橋史賢係長は「平和への願いが託されている折り鶴。廃棄よりは再生できる方が寄贈者の思いに応えられる。これからの長崎市の課題です」と話した。


 ●再生紙でまた鶴に 折り紙セット販売 先進地の広島市

 広島市では、折り鶴を再生してさまざまな商品が生まれている。障害者の自立・就労支援施設「はぐくみの里」(広島市東区)は、再生紙を再び千羽鶴として活用できる折り紙セット「ずっと折り鶴、ずっと折り紙」(24枚432円)を売り出している。

 定番の赤や黄色などの単色だけでなく、鶴の形に折り上がると首や尾、翼の部分がそれぞれ違う色になるように計算された「レインボーカラー」の折り紙もセットになっていて、国際的な広告賞のパッケージデザイン部門で賞を獲得した。ほかにもノートやメモ帳、ポチ袋などを商品化している業者があり、インターネットで購入できるものもある。

 広島市立の学校では今年春、折り鶴再生紙で卒業証書を作成して授与した。2015年に市立広島商高の生徒から提案があり、同校で先行して実施。仕上がりに問題はなかったため全校での採用を決めたという。市教育委員会は「将来を担う児童、生徒に被爆地の継承者としての自覚を促せれば」としている。

この記事は2016年08月27日付で、内容は当時のものです。

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