いまどきの学校<29>運動会 テントとビデオ 親の戦い

 福岡県飯塚市鹿毛馬の小中一貫校頴田校(青木宏親校長)。小学部の運動会前日の9月24日夕、親たちの“戦い”は既に始まっていた。

 運動場につながる校庭2カ所で列に並ぶ人だかり。その数200人ほど。「テントを張るために並んでるんだよ」。午後2時、1番に並んだという自営業高山直也さん(36)は笑う。

 2013年4月に開校した同校。運動会当日に車の混雑が見られたことから、昨年から前日の午後5時から1時間半、入り口を開けるようになった。

 午後5時。入り口が開くと、大人たちが一斉に駆けだした。高山さんは、自分の地区のテント区域で最前列を確保。テントを固定するためのくぎをハンマーでたたく。「2年連続の1番。やっぱり1番は気持ちいい」。高山さんは笑う。

 日が暮れるにつれ、運動場には、個人用テントが続々と出現していった。

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 同校の小学部の児童数は現在268人。頴田小時代の一番多い時は1790人(1958年)だったが、6分の1以下に減った。

 運動会で張られるテントといえば、かつては学校のものと、各地区で設けるものが主流だった。今は個人用の方が多い。

 「個人用テントが出始めたのは、10年ほど前くらいじゃないかな」。同小の卒業生で、現在はPTA会長の富山勝巳さん(47)は振り返る。

 学校によると、校区の34地区のうち、子どもがいない地区もあるという。「地区の代表者たちは、地域のテントを張りたいと思っているけど、自治会や子ども会に入ってない家族もいるから、なかなか難しい」と富山会長は言う。

 運動場にはまだ地区テントを張っているところもあった。PTA鹿毛馬地区委員の高野秀樹さん(45)は「うちの地区は子ども10人ほど。子どもが出場すると、みんな家族みたいに地区をあげて応援しているよ。ずっと地区テントを立てていきたいね」

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 運動会当日。一番乗りして場所を確保した高山さんはテントに居なかった。「ビデオカメラを撮るのが忙しくて」と苦笑いする。

 富山会長によると、目の前で子どもたちが走ったりダンスをしたりする姿をリアルタイムで見るのではなく、ビデオカメラで撮って保存するのが今どきなんだという。

 運動場内に五つ設けられたカメラ席は、どこもいっぱい。保護者らは本部の横などに設けられたカメラ席で子どもたちを追う。最初の入場行進で、校旗を持って先頭を歩いた体育委員長の仲野貴洋君(11)は「たくさんの人に見守られたようで緊張したけど、気合が入った」と話す。

 個人用テント、ビデオカメラ…。時代とともに、応援の風景は変わった。これも少子化の断面なのだろうか。しかし、子どもの成長を毎年、しっかり見届けたいという親たち、さらに地域の人々の思いは変わらない。

この記事は2016年10月04日付で、内容は当時のものです。

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