民生委員 4市で欠員 高齢者の見守りに課題 改選控え続く試行錯誤 福岡県

 高齢者の見守りや、災害時の安否確認などを担う民生委員のなり手不足が課題になっている。2013年時点で、全国の充足率は97・1%。地域全体の高齢化が進む中で、ますます問題が顕在化すると見られている。筑後地区では既に4市で欠員が生じ、今年12月に3年ぶりに行われる改選でも、必要な定員を満たせるか不透明な状況という。地域での見守りをどう維持していくか。記者が居住する久留米市の鳥飼校区で試行錯誤する姿を追った。

 「おばあちゃん、元気にしてた?」。今月上旬、鳥飼校区の民生委員、青沼典子さん(58)が、1人暮らしの90代女性宅を訪れ、玄関先で向かい合っていた。安否確認の一環で、何げない会話から健康や生活面に変化がないか読み取る。女性は「1人では心配なこともある。定期的に来てくれて心強い」と笑顔を浮かべる。

 青沼さんは2008年に民生委員になった。現在、約180戸を担当する。1カ月に一度の割合で訪問しているのは1人暮らしの高齢者約10戸。夫婦など高齢者のみで暮らす世帯は2カ月に1回程度回るという。

 「はじめは自分につとまるか心配だった」という青沼さんだが、現在は小学校で非常勤の支援員として授業補助の仕事に就き、両立させている。「自分が住む地域を自分たちで守る活動は結束を強め、将来を担う子どもたちの地域への愛も育てる」。青沼さんはそう信じている。

 しかし、一般には民生委員の活動への理解は十分でなく、ハードルも高いようだ。筑後地区の12自治体を取材したところ、民生委員の欠員は久留米市5人▽大牟田市8人▽柳川市2人▽みやま市1人-の計16人。ある市の担当者は「山間部など高齢化が進んだ地区では引き受け手を見つけられなくなっている」と悩む。

 久留米市では民生委員への理解を深めるため、活動を紹介する出前講座もしているが「申し込みが少ない」のが現状だ。改選を控え、欠員が生じていない自治体からも「引退する民生委員の後任探しが難航している」との声が聞こえてくる。

 同じ悩みを抱える鳥飼校区は2年前に手を打った。校区内の17ある自治会が「民生委員を推薦する」と申し合わせたのだ。従来、引退する民生委員が独力で探していた後任者の人選に、自治会が積極的に関わるようになり、次の改選で退任する5人全員の後継者を確保できた。

 自治会を束ねる同校区まちづくり協議会の寺崎眞会長(71)は「ともに地域を守っていくのだから、支え合い、密に連携を取る関係を築くことが重要だと考えた」と狙いを明かす。地域全体でサポートする動きは筑後地区の他の地域でも少しずつ広がっているという。

 久留米市全体の高齢化率は現在25・39%。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2030年には32%を超える。支える側の人材不足が進む一方で、支援を必要とする人は急増する見込みだ。

 同校区では本年度から、民生委員が自治会の会合に参加するようになった。地区の社会福祉協議会が組織するふれあいの会を含めた3者で「地域見守りネットワーク」を組織し、負担の集中を避ける態勢づくりと情報共有を進めている。「高齢者ばかりでなく、子どもの貧困、防災の問題もある。地道に命を守る活動を継続するため、民生委員の活躍は欠かせない。できることをやっていきたい」。寺崎会長は強調する。

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 ●ワードBOX=民生委員

 正式名称は児童委員を兼ねているため、「民生委員・児童委員」。地方自治体の推薦を受け、厚生労働相から委嘱される特別職の地方公務員。原則75歳未満で任期は3年。高齢者の安否確認や青少年の問題行動の把握、妊婦や障害者の支援など活動内容は多岐にわたる。厚労省の配置基準で、1人につき町村部で70~200戸▽10万人未満の市で120~280戸▽10万人以上の市と中核市で170~360戸-を担当すると定められている。交通費などを除き、報酬はない。

この記事は2016年09月14日付で、内容は当時のものです。

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