化石ハンター30年 マイカーの移動距離は地球一周分 大発見で一躍時の人に

 ●「次世代のために」

 自宅の書斎にはプラスチックケースが所狭しと積み重ねられている。中身はアンモナイト、サメの歯、小魚の全身骨格など、化石や化石を含んだ岩石だ。八幡西区北筑の佐藤政弘さん(64)は知る人ぞ知るアマチュア化石採集家。近年は約30年間で取りためた岩石から“骨”を削り出す作業に没頭している。

 作業は「クリーニング」と呼ばれ、ハンマーや小さなたがね、はけなどを使い、化石の表面に付着した石を少しずつ削っていく。ミリ単位の緻密さが求められ、ルーペのほか対象物を立体的に観察できる双眼実体顕微鏡も用いる。もろい部分は接着剤で補強しながら黙々と石と格闘する。「何年もかかる化石もある。根気が要りますよ」と笑う。保管している化石は数百個。北九州市近郊を中心に自分で発掘した物だ。

 のめり込んだのは小学校教員だった30代前半。教え子が「何て化石?」と近所で出土した貝の化石を持ってきたことがきっかけだった。当時は知識がなく化石を手に学芸員を訪ねると、生息した時代背景まで即座に説明してくれた。「数億年前の地球上にいた生物を想像する古生物学にロマンを感じた」

 それからというもの、週末は必ず小倉北区の山田緑地や芦屋町の海岸沿いなどへ、足を運んだ。「ある年のマイカーの移動距離は(地球一周に相当する)4万キロを超えました」

 「猪突(ちょとつ)猛進だった」ことが功を奏してか、1990年2月、大発見をしてしまう。宮若市の千石峡で白亜紀の地層から1本の歯の化石を見つけたのだ。岩石のまま持ち帰り、慎重に化石を覆った石を取り除いていくと、細かいぎざぎざが見えた。「肉食恐竜の歯の特徴であり、その時の感動といったら…」と興奮気味に振り返る。

 専門家の分析で、体長10メートルほどで国内最大級の肉食恐竜と判明した。県内初の恐竜の化石でもあり、佐藤さんは“化石ハンターの先生”として一躍時の人に。この恐竜は出土した地層の名と佐藤さんの名にちなみ「ワキノサトウリュウ」と名付けられた。

 歯の化石は現在、いのちのたび博物館(八幡東区)に展示され、ワキノサトウリュウも同館のジオラマで復元された姿を見ることができる。同館には20点近くの化石を寄贈した。「発掘した化石は宝だが、多くの人に見てもらうことが大事。クリーニングを続けて整理し、特に次世代の子どもたちのために生かしていければ」と強調した。

この記事は2016年07月30日付で、内容は当時のものです。

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