福岡市の後援撤回問題 「戦争展」政治的ですか? 市側「中立保てない」 団体「平和守る立場」

 ●容認のさいたま市 「展示通じ議論を」

 福岡市の市民団体主催の「平和のための戦争展」(8月23~28日)について、福岡市が「展示内容に政治的主張が含まれる」として、いったん承諾した名義後援を取り消した。「行政の政治的中立性が保てない」というのが最大の理由だが、今夏に同様の戦争展を後援したさいたま市は「賛否の分かれるテーマは、展示を通じて議論を深めてほしい」と異なる見解を示す。中立とは何か、賛否の割れる課題への意見表明は「政治的」なのかを考える。

 福岡市の戦争展は戦後50年の1995年、教訓を風化させないため平和、国際など各分野の市民団体が連携して始めた。公共施設にチラシを置くため数年前から市に後援を求めている。

 市総務課によると、2012~14年は後援したが、昨年は展示予定の漫画にあった「原発再稼働反対」の表現などが「特定の主義主張に立つ」として不承諾。今年は当初、団体の申請に基づき「内容を改めた」として後援を認めたが、職員が会場で「戦争法廃止」「TPP批准阻止」など少なくとも8点の違反を確認したとして後援を取り消した。この中では、模造紙に書かれた「核も原発もいらない!被爆者の願い」の文字のうち「原発もいらない!」の部分も違反とされた。

 高島宗一郎市長は6日の会見で「どんな催事を行うのも自由だが、市の後援となれば一定の中立性を保つ必要がある。(主催者には)具体例を示し、偏った内容の展示はないとの説明を受けており、虚偽の申請と言わざるを得ない」との見解を示した。市側は「申請段階で原発、安保、消費税、憲法に関する主義主張はないかと確認していた」と説明する。

 一方、市民団体側は「具体的事例は聞かれておらず、署名と寄付行為、特定の政党や宗教を支持していないか、という確認だった」と主張。約250点の展示の大半は、憲法の歴史や核兵器の恐ろしさを伝える内容だといい、市が「違反」とした8点の多くは、参加した市民が「平和に対する感想、意見」を自由に持ち寄れるコーナーに展示されたものだった。展示会運営委員長の石村善治福岡大名誉教授は「特定の政党や政治家を支持する内容はなく、憲法や平和を守る立場からの展示物だ」と訴える。

 「政治的中立」を理由に自治体が集会の施設使用や展示会の後援を断るケースは各地で起きている。7月30日~8月1日、さいたま市で開かれた「平和のための埼玉の戦争展」では、実行委員会が県内の全自治体に後援を申請。回答を寄せたうち3自治体は断ったが、17自治体・市教育委員会は承諾した。安保法や原発に批判的なパネルも並んだという。

 後援したさいたま市総務課は「バランスのいい展示が望ましいが、賛成、反対どちらの立場ということで後援を拒むことはない」と話した。

 ●市の対応は妥当だ

 ▼八木秀次麗沢大教授(憲法学)の話 名義後援を出せば市が主張を認めたことになる。政治的中立を求めるのは当然で、市の対応は妥当だ。市の定めた後援の承諾基準に反した展示があるならば、法令を順守するかどうかの問題であり、言論の自由の領域にはあたらない。

 ●物言えぬ社会懸念

 ▼服部孝章立教大名誉教授(メディア法)の話 人権侵害のヘイトスピーチとは違い、原発や安保法など賛否が割れる社会問題への意見を示しただけだ。市の対応は過剰で、市民が物を言いにくい社会につながりかねない。政治的主張というなら、何が政治的なのかを丁寧に説明するべきだ。

この記事は2016年09月08日付で、内容は当時のものです。

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ