慰安婦和解 波乱の船出 韓国で財団発足 焦る反対派、会見乱入 財団側は「切り崩し」自信

 旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る昨年末の日韓合意に基づく「和解・癒やし財団」が28日、発足した。歴史認識について対立してきた日韓が協力し、戦時中に深く傷つけられた韓国人女性の名誉と尊厳を回復する歴史的な試みが動きだす。だが、「被害者を無視した一方的な合意だ」と主張する反対派の抗議活動は過激化し、日本ではソウルの少女像の早期撤去を求める声が自民党の一部に根強い。財団にとって波乱含みの船出となった。

 「私たちが被害者に寄り添い、心を通わせる努力を続ければ、必ず同じ道を歩ける日が来るはずです」。財団の理事長に就任した金兌玄(キムテヒョン)・誠信女子大名誉教授は28日の会見で、事業遂行に自信をにじませた。

 財団関係者によると、慰安婦問題の解決には「朴槿恵(パククネ)大統領の強いこだわりがあった」。日本から財団運営を任せられ、難題の少女像撤去も課せられるという「外交上の損」(日韓外交筋)を受け入れてでも、任期が残り1年半になった朴氏の「政治的遺産」にしたい狙いが透ける。

 財団は年内に元慰安婦1人当たり数百万円を渡す方向だ。財団関係者は「大金を見せれば最後は全員が受け入れる」と強気。韓国政府や財団は、合意に反対する「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」や「ナヌムの家」の関係者を切り崩し、財団の理事に加える交渉を進める考えだ。

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 「日韓合意を破棄しろ」「和解を強要するな」。28日午前、財団発足を報告する会見直前、十数人の若者が乱入し、涙を流しながら抗議した。会見後には金理事長が若い男にスプレーで襲撃される事件も発生し、現場は一時騒然とした。

 日韓合意への抗議行動は激しさを増している。毎週水曜日に挺対協が少女像周辺で開催する集会。27日は通常の数倍の約千人が集まった。挺対協の尹美香(ユンミヒャン)常任代表は「私たちはあきらめない」と気勢を上げた。

 挺対協は政治レベルでも合意に否定的な最大野党「共に民主党」と連携して、元慰安婦の生活支援などを盛り込んだ特別法の制定を要求。市長が民主党系のソウル市には少女像の撤去阻止に向け、像を市指定造形物に登録するよう働き掛けている。こうした一連の動きに対し、日韓外交筋は「政府や財団に外堀を埋められて、焦りが出ているのではないか」と指摘する。 (ソウル曽山茂志)

 ●10億円拠出「早めに」 日本 少女像撤去へ先手

 韓国で元慰安婦を支援する財団が発足したことについて、日本政府は「日韓合意が一歩進んだ」(外務省幹部)と受け止めている。今後は韓国との外務省局長協議で、財団の事業内容や10億円の拠出時期などを調整する。

 早ければ8月とみられる拠出時期に対し、自民党内には反発もある。ソウルの日本大使館前に設置された少女像の撤去時期が見通せないため、「撤去を資金拠出の前提条件にすべきだ」との声が上がる。

 だが、政府は「早い方がいい。そうすれば合意を履行するかどうかのボールは韓国側に渡る」(官邸筋)と考え、撤去を待たずに拠出する方向で検討している。財団の活動に必要な資金を早めに拠出し、韓国側に撤去へ向けた努力を促す構えだ。

 一方、財団が10億円の拠出金から元慰安婦らに支給する方向の「癒やし金」が、事実上の賠償ととらえられる懸念もある。日韓請求権協定で、賠償問題は「法的に解決済み」とする政府見解との整理が必要になる。政府は、拠出金を癒やし金だけではなく、若い世代のために使うことを韓国側に提案している。

 外務省局長協議では、自民党内の根強い反発を踏まえ、少女像撤去までの見通しを韓国側に求めるとみられる。外務省幹部は「互いに納得できる状況に至れば資金を出す。日韓の接点を見つけるのが課題だ」と指摘した。

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 ●ワードBOX=従軍慰安婦に関する日韓合意

 日韓両国が従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した昨年12月28日の合意。岸田文雄外相が訪韓し、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と共同発表した。日本政府が軍の関与と政府責任を認め、韓国が設立する元慰安婦の支援財団に10億円を拠出。「元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」のための事業を行うことを決めた。韓国政府は、日本が撤去を求めるソウルの日本大使館前の少女像について、設置団体と協議するなど「適切に解決されるよう努力する」とした。両政府が国際社会で非難し合うことを控えることも盛り込んだ。 (ソウル共同)

この記事は2016年07月29日付で、内容は当時のものです。

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